12月6日

去る消息筋によると、12月6日は「姉の日」だそうなのですよ。





アレですか、

姉に感謝する日なのか、

それとも自分が姉にならなければいけない日ですか。

これじゃイマイチはっきりわかりませんし

12月6日が姉の日である理由も良くわかりません。

でも、とにかくもう姉の日なのだそうですよ情報筋的に。





アレです姉。





姉といえば、ボクが良く思い出すのは

ボクが小さい頃(年齢的に)の思い出なのですよ。

今よりも小さい頃(身長も)の思い出なのですよ。





生傷ばかり作って帰ってくるボクをいつも叱って

しみるクスリばかり塗りじゃくり、

「どう?」

「ここはどう?」

と一番しみる部分を尋ねながら、悶絶するボクを嬉しそうに眺める

もうね、幼少にして既にドSな姉だったのですよ。





なんかアレですね

確かウチには母だと言い張る、

ようこりんと名乗るコリン星出身の生き物がいるらしいんですけどね

(和名・蓉子/みのもんたリスペクト)

そいつよりも、よっぽど母親面していましたね姉。





でもね

良くボクを叱るものの

いたずらでマズい事をしたときは決まってボクをかばってくれたのですよ。





アレなんですね

大きくなってから気づいたんですけど

大変勇気がいる行動なんですよね、そういうのは。

そういうことに気づいたにもかかわらず、ボクはいまだに

「ありがとう」と姉に一度も言えていないわけですよガッデム。





姉は高校を卒業するなり家を出て

働きながら都内某所で悠々自適生活を始めたんですけどね

静かな生活になってよっぽど退屈だったのでしょう。

当時持っていたボクのポケベルには

しょっちゅう姉からのメッセージが届いていたのですよ。





「ゲンキ?」

ああ元気だよ。ねーちゃんは?





「アシ カユイ」

知らねーよ。





「アサカ ユイ」

その人は知ってる、でも何?





「アシカ カユイ」

飼ってんのかよ。





「アシカガ タカウ」

タカウジだろ。文字数オーバーするなら書くなよ





「アキタ。サラバ。」

マイペースにも程があるわ!





こんなメールが1日おきに1件くらい届くのですが

結局何を言いたかったのかは全く謎なんですけどね

元気な事だけは伝わったので、それはそれでよかったのですが、その時点で既に

コイツ天才だ、とジェラシーを感じて止まなかったのですよ。





そういえばある冬の日

一度だけ、まともなメッセージが届いたことがありました。





「ウチニコレル?」





絶対ボクには頼ったりしないヤツだったんですけどね

さすがになんかあったのかと思い、

姉を心配している自分自身がなんだかこっパズカシつつも

学校帰りに姉の部屋へ寄ってみたわけですよ。





なんか、ボクを迎え入れるなり

姉は、ええいああと声をあげて泣き出しました。

ボク、その理由を尋ねる事がビタ一文できなかったので

ただ部屋に居ただけだったんですけどね

なんかもう、姉も人間なんだなって初めて知ったのですよ。





つまりそれまで姉はビタ一文人間ではなかったという訳ですよ。





なんていうかそれまでの姉は、姉という生き物であって

姉という生き物は常に強くて、

自分とは別次元の生き物だと思っていたのでね

自分と同じ弱い人間だと、当たり前の事に気づいたときに

なんだかものすごく恥ずかしくなったのですよ。





帰り際、姉がボクに「ありがとう」と小声で言いました。





今まで一度も自分が言えない「ありがとう」を、

何も聞けず、居ただけの自分に伝えてくれている。

姉と比べて自分の無力さとふがいなさに、なんか悔しくなったのですよ。





この人は一生ボクの前を走りつづけるんだろうな。

この人には一生かなわないんだろうな。

そんなことをぼんやり感じ始めた、

盗んだバイクで走り出した(ボク以外の誰かが)、15の夜だったのでした。





◆後編へ続く