映画『男はつらいよ』は、一般的には「好きになったマドンナに失恋をくりかえす寅さんの人情喜劇」といわれてますが、別の視点から見ると、マドンナと彼女に恋をしている男性が寅さんによって結ばれる映画ともいえそうです。

寅さんはマドンナと男性とを結びつける“恋のキューピット”になっているのです。

そして、この“縁結び”のご利益を授けているのが、柴又八幡神社のご祭神のようです。

柴又八幡神社はお社が古墳の上にあり、その古墳から「寅さん埴輪」と呼ばれる埴輪が出土しています。

「寅さん埴輪」のレプリカが「寅さん記念館」に展示されていて、そこに山田洋次監督の写真とともに監督の次のような言葉が書かれています。


寅さん埴輪






「寅さん埴輪」について思う

 正倉院に保存された戸籍帳によると、今から約1,300年前の奈良時代、この柴又の地に「トラ(孔王部刀良〔あなほべのとら〕)」という男と「サクラ(孔王部佐久良売〔あなほべのさくらめ〕)という女がいたそうです。なんたる偶然かと、ぼくは苦笑したものですが、今回寅さんと同じ帽子をかぶった珍しい埴輪が発掘され、顔つきがどことなく似ている上にその日は渥美清さんの命日だと知ったときは驚きました。
 ぼくは霊魂などは信じない人間ですが、ここまで偶然が重なるとなにか不思議な気分にとらわれるのです。はるか昔、万葉の頃に生きていたトラさんという強烈な個性の持ち主が、ぼくに命じて寅さんを主人公にした映画を作らせたのかもしれませんね、もしかして!
山田 洋次」



このトラという人物が柴又八幡神社のご祭神なのではないでしょうか?
監督が言っているように、もしも万葉の時代のトラさんが映画を作らせたのなら、そのストーリーのインスピレーションもトラさんが与えたのであり、ご利益を広く人々に知らせるために映画のストーリーを創作したとも考えられるのです。