柴又の駅舎を出ると、すぐ目の前に寅さんの銅像が立っています。
振り返るその視線の先には、今出てきたばかりの実家のお団子屋があります。
この銅像は1999年に建てられ、足元には山田洋次監督の言葉が刻まれています。
「寅さんは損ばかりしながら生きている
江戸っ子とはそういうものだと
別に後悔もしていない
人一倍他人には親切で家族思いで
金儲けなぞは爪の垢ほども考えたことがない
そんな無欲で気持ちのいい男なのに
なぜかみんなに馬鹿にされる
もう二度と故郷になんか帰るものかと
哀しみをこらえて柴又の駅を旅立つことを
いったい何十辺くり返したことだろう
でも 故郷は恋しい
変わることのない愛情で自分を守ってくれる
妹のさくらが可哀想でならない
――ごめんよさくら いつかはきっと偉い兄貴になるからな――
車寅次郎はそう心に念じつつ
故郷柴又の町をふり返るのである
1999年8月 山田 洋次」

