将門伝説にはたくさんの種類がありますが、その中でも有名なのが、“七人の影武者伝説”です。

『将門伝説』(梶原正昭・矢代和夫著)によると、東京都と山梨県の県境にある七ッ石山には次のような話が伝わっているそうです。


藤原秀郷と将門が七ッ石山で対峙した時、頂上に陣どった将門は六人の影武者を藁人形で作り、その真ん中に立ち、「さあ、どこからでも射てみよ」と秀郷に向かって豪語しました。
秀郷が見ると、同じような将門が七人並んでいて、どれが本物だか見分けがつきません。
困った秀郷は成田不動の名を念じ、「口から白いものがたなびくものを射よ」というお告げを受け、強弓を引いて見事に本物の将門を射ることができました。
その途端、七人の武者たちはたちまち石になってしまったといいます。


また別の伝説によると、
六人の武者には灯火に映る影がなく、本体には影があるというので、藤原秀郷がものの隙間から覗くと、時々こめかみの動く者がいます。
秀郷はこれ幸いと弓に矢をつがえて射ると、矢は過たず小耳の根と思われるところをずんと射通したので、さしもの将門もいきなり仰向けに倒れ空しくなりました。
すると残る六人の武者たちも、電光石火のごとく光とともに消え失せてしまったといいます。


そのほかにも将門は、砂煙の中に単身現れたと思うとさっと消え、次の瞬間には全く反対の陣に現れるという七人の影武者を用いた秘術を使ったそうです。