日本には八百万の神々がいらっしゃいますが、この神話には“祖神尊(みおやのみこと)・新嘗祭(にいなめさい)の神・富士山の神・筑波山の神”が登場しています。

富士山と筑波山の両方の神様とも、その年に収穫した穀物を神様に捧げ、その年の収穫を神様に感謝する“新嘗祭”のために、家の中で身を清め他人との接触を断つ“物忌”をしていましたが、親神である
祖神尊が訪ねてきたとき、富士の神は宿泊を断り、筑波の神は禁忌を破ってまでも宿泊を許しました。

富士の神は新嘗祭の神に忠実に仕え、一方の筑波の神は親神である祖神尊に忠実だったといえるでしょう。

富士の神は宗教的儀礼を厳格に遵守し、筑波の神はそれよりも親子の情を大事にしていたともいえると思います。

その結果、筑波山には人々が集まり、山の神といっしょに歌い舞い、
飲食して楽しみ、また男女が互いに恋の歌を歌って相手を見つける“歌垣(うたがき)”が行われていました。

標高約877mの筑波山は頂上まで2時間程でたどり着けるので親しみやすく、一方の富士山は当時は噴火していたので神秘的な神の山として崇められていたようです。