神社の由来に詳しくは記されていないが、『江戸名所図会』によると、愛宕神社は江戸期には神仏習合していて「愛宕山権現社」と呼ばれていた。

創祀は慶長8年(1603)、徳川家康が戦勝を祈願した行基菩薩作の勝軍地蔵尊をお祀りしたのがその始まりとされているが、こちらの仏様は防火・防災の守り神としても江戸の人々の信仰を集めていた。

桜田門外の変のとき、勝利の神様にあやかり水戸藩の浪士たちがここで祈願してから江戸城に向かったといわれている。


「防火の神様と戦争の神様だと矛盾するんじゃないの?」 Y嬢が言った。

「同じ神様の陰と陽なんじゃないかなぁ。
戦いに強い神様は、戦いや火事を防ぐ力もすごいんだよ、きっと」

彼女は首をひねった。