東京タワーから新橋方面に向かって大通りを10分ほど歩いていくと、左手の少し奥まったところにに大きな鳥居が見えてきた。

さらに近づいていくと、鳥居の手前に看板があって、大きく「出世の石段」と書かれている。

「あった!ここが愛宕神社だよ」  私は隣のY嬢に話しかけた。

なんでも江戸時代にこの石段を馬で上った家臣がいて、将軍に褒められたらしい。

石段の前に立つと、傾斜が急で目の前に壁がある、という感じである。 標高26メートルの23区内で一番高い自然の山である。

 



見上げると、両脇の鬱蒼と茂っている樹木が石段を覆っていて、上にいくにつれてしだいに緑の中に吸い込まれていくように見える。

「手すりもあるし、段の高さもそんなに高くないから上れるよ」

Y嬢はそう言うと、すたすたと先に立って上り始めた。