司法修習生のときでした。

検察修習といって,各地検で

検察実務の修習として

実際の事件の被疑者取調べをします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私に配転された事件では

明らかに万引きという事案でしたが

(いわゆるレジ抜け)

被疑者は「会計を忘れていた」

「万引きするつもりはなかった」

と,窃盗の故意を否認していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記録を見る限り

こんな弁解が通るわけがない。

しかも,警察でも認めている。

なんというチョロい事件なのだ

と思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし,なんと!

警察では万引きするつもりだったと

認めていたのに

私の前では否認するではありませんか。

警察には無理矢理署名させられた,と。

万引きするつもりはなかったんだ,と。

いかに警察の取調べが酷かったか,と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の目を見て。

私の目をまっすぐに見て。

涙を浮かべながら

私に訴えかけている。

そう「私は,冤罪被害者です」

と言わんばかりに。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭では絶対にこれは嘘でしょ?

とわかるんだけど

え?でも,こんなこと言ってるし

もしかして,この人が言っているのが

真実だとしたら???

まっすぐと目を見て嘘をつく人がいる???

私は,被疑者の話を懸命に聞いていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると,それを見ていた

指導担当鬼軍曹が手招きして

私を呼び出しました。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼軍曹:

「あのさあ,お前さぁ

まさか,被疑者が言ってること

真に受けてるんじゃねーだろうなぁ?」

私:

「(ギクリっ)ま,ま,まさか・・・」

鬼軍曹:

「でもさあ,お前さあ

被疑者の話『うん』『うん』っつって

頷きながら聞いてるよなぁ」

私:

「あ,はい・・・」

鬼軍曹:

「それ見てたらさぁ

お前,被疑者の話を真に受けてるように

しか見えないんだけど?」

私:

「(ギクリっ)・・・」

鬼軍曹:

「そんなんで割れるわけねーだろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とお叱りを受けました。

・・・いや,ちょっと真に受けそうに

なっていたことがバレていた(^^;;

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからは,気を取り直して

生活状況等,いろんなこと具体的に

当時の心情を交えながら聞き

聞いている中で,不合理だと思うところ

については,具体的に詰めて聞きました。

すると,明らかに矛盾点が出てきて

最後には,被疑者は嘘をつき通せなくなって

自白しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これで私が学んだこと

「世の中には目を見て嘘をつく人がいる」

ということでした。

これは私にとっては衝撃でした。

と同時に,私は,とっても

人に恵まれていたんですね。

人によっては

そんなこと当たり前じゃないか

ということかもしれません。

しかし,私にとっては衝撃だったのです。

初々しいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後,検事になってからというもの

みなさん,真っ直ぐ目を見て

嘘をつきますよ。

詐欺師は特に,目を見て嘘をつきます。

これは取調官にとっては常識です。

最終的には自白しますけどね(多くは)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世の中には善人と悪人がいます。

嘘をつくなんて考えられない。

しかも,真っ直ぐと目を見て嘘をつく

なんて考えられない。

ましてや,嘘をついて人からお金を

騙し取るような人がいるなんて

考えられない。

お天道様が見ている中で

悪いことなんてできるわけがない。

と,本気で思っている人がいます。

そういう人は,善人です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で,世の中には悪人がいます。

「世の中には善も悪もない」

と開き直って

自分の目的(欲望)のためには

人に嘘をついたって構わない。

騙される方が悪い。

起訴されないためには

有罪にならないためには

嘘をつくのは当たり前だ。

と考えている悪人もいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほとんどの人,特に日本人は善人なので

悪人の思考回路を理解しておらず

ここまで堂々と言うのだから

本当のことを言っているのだろう

と思い込んでしまいます。

しかし,悪人はいます。

悪人は,自分の目的のためなら

事実を捻じ曲げてデマを流します。

だいたいの目的はお金,そして自己保身

だと思います。

悪人には「恥」の意識がないので

嘘をつくことが恥ずかしくないようです。

善人には信じられないと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これまでは

自分さえ善人として生きればいい。

悪人と関わらなければいい。

という生き方でもよかったかもしれませんが

そうやっているうちに

じわじわと悪人にやられてしまっている

ということも大いにあるので

気をつけましょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

法曹を目指す方や司法に携わる方は

特に肝に銘じていただきたいと思います。

悪人に騙されるようでは

司法修習生以下ですよ。

悪人に加担するなんてもってのほか。

正直者が馬鹿を見る社会になってほしくないです。

心が美しい人たちが幸せに生きられる

日本であり,世界でありますように。

 

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