『ヒロシ』#31
その日はB級アイドルのトークショーと握手会がありヒロシは一時間前から物販をいそしんでいた
「今日も早いですねえ?」
ニヤニヤしながら常連の男が話しかけてきた
「遅い方だよ、来たときには15人くらいたもの…」
互いに名前も知らないのだが、このくらいの会話は普通に行われていた
ヒロシは何気ない会話の中本心は
「気持ちわりいな、てめえも早いじゃねえかよ…」
と思っていた、どこに行っても心を開く相手などいなかった
ヒロシはアイドルの写真集を2冊手に取った、見る用と保存用である
そのアイドルが売れるかどうかどうでもよく、いずれ値打ちが付けばラッキー程度
それよりも握手会でカワイイ女の子に触れられるという事がなによりであった
しかし考えてみればカワイイ女の子と約50センチの距離で顔を合わすことなどめったに無いことでしかも手まで触れられる事を考えるとモテない男たちにとっては断然お得なイベントなのであろう
イベント開始まであと30分。
つづく