SIERA LEONE 2013 Spring collection #7 前編
こんにちは。
SIERA LEONEの渡辺です。
昨日紅葉を見に、日光東照宮へ行って参りました。
東照宮はパワースポットとしても有名のようですね。
真っ赤な楓は、絵画の様な鮮やかさで
とても綺麗でした。
今回は 2013 spring collection のリリース
第7章 <前編>をお送りします。
***********************
07: Butterfly symphony <前編>
“大切なものはなにか?”
電車の宙吊りの文字が突然目に飛び込んできた。
電車にはおじいさんや、学生、サラリーマン、ベビーカーを引く母親
いろんな人がいる。
こんなにたくさん人がいるのに、僕を知ってる人は誰もいない。
なにか胸のあたりに、
温度を感じることのない空洞がある様な気がした。
街中を歩けば大気中にたくさんの言葉が充満している。
それはたぶん、大切なみんなの一部。
もしかしたら空洞を埋める為に一生懸命なのかもしれない。
桜の花が咲き始めた公園のベンチにゆっくりと座り
子供たちが作るシャボン玉を目で追っていた。
あの中にはなにがつまってるんだろう?
ふと目を下ろすと隣のベンチに
白いヒゲを生やしたおじいさんが
ハトにアプリコットをあげていた。
おじいさんもシャボン玉を眺めていたようだった。
「シャボン玉、綺麗ですね。」と僕が話しかけると、
「透きとおったものは、どれも美しい。」とにこやかに言った。
「何かあったのかい?」
とおじいさんはハトを手に乗せながら言った。
「こころってどうしようもなく、切なくなることがあるんですね。」
答えながら僕は、
どこにも持っていきようのない“空虚”という名の引力が
自分をどこかへ連れて行ってしまいそうな気がしていた。
おじいさんが僕の方に向き直した。
「安心しなさい。わたしも同じだ。からっぽだ。
私には三人子供がいてね。その子らにぜーんぶ与えてしまった。
でもね、からっぽだからこそ相手の悲しみや痛みに気づいてあげられる。
自分がいつも満たされてたらなにも入る余地がないだろう。
そしてね、もし満たされた時には進んで自分から与えにいくんだ。
世界は“まあるい”から何処で止まるでもなく、いつか自分に戻ってくる。」
その笑顔は陽だまりのようだった。
突然ハトたちが一斉に飛び立ち、反射的に目を閉じた。
ゆっくりと目を開けるとおじいさんはいなくなっていた。
ふわっと真っ白な羽根が一つ、舞っていた。
***********************
本日夜には、“07: Butterfly symphony <後編>”をアップ致します。
楽しみにしていて下さいね。
SIERA LEONEの渡辺です。
昨日紅葉を見に、日光東照宮へ行って参りました。
東照宮はパワースポットとしても有名のようですね。

真っ赤な楓は、絵画の様な鮮やかさで
とても綺麗でした。
今回は 2013 spring collection のリリース
第7章 <前編>をお送りします。
***********************
07: Butterfly symphony <前編>
“大切なものはなにか?”
電車の宙吊りの文字が突然目に飛び込んできた。
電車にはおじいさんや、学生、サラリーマン、ベビーカーを引く母親
いろんな人がいる。
こんなにたくさん人がいるのに、僕を知ってる人は誰もいない。
なにか胸のあたりに、
温度を感じることのない空洞がある様な気がした。
街中を歩けば大気中にたくさんの言葉が充満している。
それはたぶん、大切なみんなの一部。
もしかしたら空洞を埋める為に一生懸命なのかもしれない。
桜の花が咲き始めた公園のベンチにゆっくりと座り
子供たちが作るシャボン玉を目で追っていた。
あの中にはなにがつまってるんだろう?
ふと目を下ろすと隣のベンチに
白いヒゲを生やしたおじいさんが
ハトにアプリコットをあげていた。
おじいさんもシャボン玉を眺めていたようだった。
「シャボン玉、綺麗ですね。」と僕が話しかけると、
「透きとおったものは、どれも美しい。」とにこやかに言った。
「何かあったのかい?」
とおじいさんはハトを手に乗せながら言った。
「こころってどうしようもなく、切なくなることがあるんですね。」
答えながら僕は、
どこにも持っていきようのない“空虚”という名の引力が
自分をどこかへ連れて行ってしまいそうな気がしていた。
おじいさんが僕の方に向き直した。
「安心しなさい。わたしも同じだ。からっぽだ。
私には三人子供がいてね。その子らにぜーんぶ与えてしまった。
でもね、からっぽだからこそ相手の悲しみや痛みに気づいてあげられる。
自分がいつも満たされてたらなにも入る余地がないだろう。
そしてね、もし満たされた時には進んで自分から与えにいくんだ。
世界は“まあるい”から何処で止まるでもなく、いつか自分に戻ってくる。」
その笑顔は陽だまりのようだった。
突然ハトたちが一斉に飛び立ち、反射的に目を閉じた。
ゆっくりと目を開けるとおじいさんはいなくなっていた。
ふわっと真っ白な羽根が一つ、舞っていた。
***********************
本日夜には、“07: Butterfly symphony <後編>”をアップ致します。
楽しみにしていて下さいね。