レポート5 | ISBIT DAIKANYAMA

レポート5

今回の研修先であるイタリアのフィレンツェは、私にとって初めてのヨーロッパ訪問となりました。
初めて訪れたその小さな街は、500年も前より変わらない建物も多く、街全体が芸術作品の様な素晴らしい光景が広がり、かつて『フロレンティア(花の女神)』と呼ばれていた名にふさわしく伝統や歴史が今も受け継がれていました。
まず私が訪れた場所は
・ウフィッツィ美術館
という、ルネサンス時代の最高傑作が集まるとても大きな美術館で、45もある部屋の中にぎっしり詰まった彫刻や絵画に引き込まれるように何時間も鑑賞していました。
近くで見る絵画は、大変工夫がされていて、なにか作者のメッセージを感じるものも数多く、絵の一部をよく見ると、絵の中に凹凸のみで表現された文字が浮き出ているものや、金箔が貼られた彫り物と一体化したような今まで見た事のなかった手法のものに出会い、自分の発想の引き出しがいくつも増えたのを感じました。
中でもボッティチェリの『春』や『ヴィーナス誕生』が見れ、本当に感動しました。
近くに飾られた3枚の絵には、少しずつ共通点があり、ボッティチェリはどんなストーリーを空想してこの3枚を描いたのだろう。別々の作品にストーリー性や関連性を持たせることが、これほどまでに興味を掻き立て、見ている人の想像力や空想力を引き出せるのかと驚き、是非自分のこれからの物作りにも取り入れていけたら良いな、と感じました。色身もとても美しく配色の参考にしていきたいです。
もう一つ、強く引きつけられたのが、レオナルド・ダ・ヴィンチのデビュー作である『受胎告知』です。とても細かいところまで丁寧に描き上げられたこの作品で、ダ・ヴィンチは世に広く知られ、後に彼の師匠はあまりの彼の才能に画家を断念したと言われているそうですが、何時間でも見ていたいと思うほど、その絵には力と繊細さが兼ね備えられ私の目と心は釘付けになりました。
ここにいなくても、作品というたった一枚の絵で、多くの人に大きな感動を与え続けられると言う事の素晴らしさを実感し、又、自分もそれを目指していきたい!と思いました。
この美術館は、書ききれないほどの驚きや感動をもらった場所になりました。
いつかもっとここにある作品の知識を高め、もう一度訪れて、違った角度から同じ作品を見てみたいな。と、思います。

・サン・ジョバンニ礼拝堂
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この建物は八角形と大変変わった構造で、フィレンツェの守護聖人聖ジョバンニを祭ったロマネスク様式の礼拝堂です。3カ所に扉があり、その一つはミケランジェロが『天国の門』と絶賛したと言われているそうです。
『天国の門』以外の扉も素晴らしい立体的な飾り扉になっており、外観の他にも床、天井、の細部に至るまで多彩な幾何学模様や絵画が施され本物の職人の仕事に触れ価値あるひと時となりました。
現在、本物は別の場所にあり、実はこちらはレプリカですが、天国の門の前には沢山の人々が集まり、ひと際注目を集めていました。

・ジョットの鐘楼
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完成まで長い年月を要し、設計したジョットが制作途中で亡くなった為、弟子が後を継ぎ完成させた塔。
中には414段の階段があり、ドゥオモーを一望出来るそうです。
建築物が壮大な為、世代を超え、設計者が完成を見れぬままこの世を去ってしまう事も、この街の建物には多々あった事を考えると、私の作成している物はイメージを物体にするまで自分自身で手がけられる事を改めて幸せに感じ、一層、創り出した商品がお客様の元へ届き、着て頂けるまでしっかりと責任を持ちたいと感じました。
そして、長い長い時間と歴史がここにはあるという事を実感し、厳かな気持ちになりました。

・フィレンツェ町並み
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少し街を歩いていると、至る所で芸術作品や、重工な建物を目にします。生活に必要な街灯やドアの呼び鈴さえも気の利いたデザインが施され目障りになる事はありませんでした。その町並みの中でも、新しくビジネスの為に作られた有名ブランドのショップや、古い建築物に埋め込まれたブランドの広告看板を見かける事もあり、長い時間をかけながら歴史が融合し、皆が町並みを守りながら少しずつ変化していっている事を感じました。歴史や古くからの本物の良いものに触れ、それをベースに新しく愛されるもの作りをしていきたいと思います。この街を訪れ、見たもの、学んだ物への感動は大きく、この記憶と経験は忘れられない大切な宝物です。

・サンタ マリア ノヴェッラ協会
フィレンツェ・ゴシック建築の代表格とも言える協会を訪れました。
ロマネスク様式とゴシック建築が調和し、至る所にあるさまざまな幾何学模様とステンドグラスがとても美しかったです。
私はゴシック建築が以前より好きだったので、建物の中にいるだけでとても高揚しました。
建物内は隅々まで沢山の幾何学柄やキリストにまつわる物語が描き巡らされていて、その一つ一つが服地の柄のヒントとなりそうな素晴らしいものでした。
日本はあまり本格的な協会がないので今まで気づきませんでしたが、天使や聖母マリア、キリストが描かれている中で、ドクロの柄や彫り物が施されているところもあり、驚きました。ドクロの横に書かれた文字の意味は分かりませんが、当時は皆が集まり祈りを捧げ、生と死について考える場所だったのかといろいろ空想が膨らみました。
縦長に高く伸びたゴシック建築特有の柱のカーブがとても美しかったです。
床などの柄/彫刻/ステンドグラス/壁の柄が所狭しとあるのに対して、一切の騒々しさも感じず、調和のとれた空間が不思議でした。
それはきっと、無造作ではなく計算し尽くされた配置と、カラーリングからくる絶妙なバランス感なのだと思います。
何百も昔の芸から得た配置のバランス感を参考に現代的な新しい物を生み出していけたら良いなと思いました。
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美術館外の像、このような像が向かい合って続く長い路地の様な物があり、どれも細部まで丁寧に彫られていました。