心理学的には何か理由があるはずだが、ほとんど興味が向かないジャンルがある。例えば、わたしは車に興味が向かないし、釣りに興味が向かないし、登山に興味が向かないし、スキーに興味が向かないし、囲碁に興味が向かない。そんなことを言い出したら、わたしは、おそらく世の中にあるあらゆるジャンルの中の0.1以下のものにしか興味を持っていないと思う。


それはわたしだけの話ではなく、大抵の人も同じだと思う。世の中にあるすべてのジャンルに興味を持ち、それを趣味なり本業にして探求していくことは物理的に不可能であるから。興味の対象が普通よりも多い人でも、その数は十もあれば多いと言えるのではいか。豊かな人生を送るためには興味があるジャンルがいくつか必要だと思うが、人によってそれがまったく違うのは興味深いことである。


わたしたちの社会はまったく違う興味(価値観)を持つ人々の集まりであり、別の分野に対して基本的に無関心である。そんなバラバラな興味の人間砂漠の中で、数少ない同好の士と出会い、同じ興味を持つ人たちが小さなコミニュティを作って寄り添い合う。類は友を呼ぶ。わたしの場合、演劇という興味の対象を通して今まで同じ興味を持つ人とたくさん出会ってきたわけである。


それはそれで仕方ないとは思うものの、時々、演劇とはまったく違うジャンルに興味を持つ人と出会いたいという気持ちを持つことがある。同じ興味を持つ人たち(同じ穴の狢)は結束しやすいが、コミニュティの内部で自閉しがちで、そんな自閉を息苦しく感じるのである。ならば、自ら別の分野の人と積極的に関わろうと努力して、新しい世界の価値観を知ろうとすればいいのだが、本人によほどのエネルギーがないと、それはなかなか簡単に実現しない。


わたしの人生も三幕構成の舞台の第三幕を迎えているので、今まで興味があったジャンルでないものに挑戦したい気持ちもあるのだが、なかなかそういう意欲を持てずにいる。こればかりはわたしを別世界へ誘ってくれる強力な案内人と出会わない限り無理そうである。


※車。(「車選びドットコム」より)