シンガーソングライターの現実 | 高橋いさをの徒然草

シンガーソングライターの現実

ネットでシンガーソングライターのEPOの告白記事を見かけた。どういう経緯でEPOがそういう告白をするに至ったかはよくわからないが、そこで彼女は、母親から虐待された過去を赤裸々に語っていた。わたしはEPOが作り歌う楽曲が大好きだったので、曲の明るさとはまったく正反対のその告白はちょっと意外であった。

うららかすぎる   日差しのまやかしで
街中なんだか   息ずいている
まばゆい春の   風はいたずらに
ブラウスの袖に   軽くそよいで
うふふふ  ちやほやされて
うふふふ   きれいになると
悪魔したくなる 
うふふふ   毎日だれかに
うふふふ   見られることが
ビタミンになる

これはEPO作詞・作曲による「う・ふ・ふ・ふ」の歌詞である。透き通った声で歌われるこの歌の内容と明るいメロディーは、若い女の子の溌剌とした生命力の輝きを感じさせる。わたしとほぼ同世代の彼女は、ポップであるとはどういうことか、その歌を通してわたしに教えてくれた一人なのである。しかし、こんな歌を歌っていた彼女の現実は必ずしも明るいものばかりではなかったのだ。少なくとも当時、彼女から「母親からの虐待」という負のイメージを抱いた人間は誰一人としていなかったにちがいない。

では、ユーミンはどうか?   ユーミンこと松任谷由実の歌も、EPO同様にわたしにポップであることの魅力を教えてくれた一人だ。

昔となりのおしゃれなお姉さんが
クリスマスの日  わたしに言った
今夜  8時になると  サンタが家にやってくる
ちがうよ  それは絵本だけのおはなし
そういうわたしにウィンクして
でもね  大人になれば  あなたもわかる  そのうちに
恋人がサンタクロース
本当はサンタクロース
つむじ風追い越して
恋人はサンタクロース
背の高いサンタクロース
雪の街から来た 

ユーミン作詞・作曲による「恋人はサンタクロース」である。こんなお洒落な歌を歌うユーミンにも、EPO同様、歌の内容とは裏腹に厳しい現実が横たわっていたのだろうか?

※EPOのベスト・アルバム。(「Amazon.co.jp」より)