お金と友だち | 高橋いさをの徒然草

お金と友だち

「お金は儲かってはいけない。ほどほどが一番いい。儲かり過ぎると、お金と友だちでなくなるから」

年末の忘年会の席で、わたしよりずっと年上のとある会社の社長がそのように言っていて、印象に残った。わたしはお金と余り縁がない暮らしをしているので、こういう認識はまったくなかった。だから、社長の言葉はちょっと新鮮であった。社長の考えに拠れば、お金とは主従関係で付き合うものではなく、対等な立場で付き合うのが好ましいということだと思う。嫌が上にもお金と付き合うことを余儀なくされる会社社長という立場の人だからこそ、こういう言葉を口にすることができるように思う。

省みれば、わたしたちは、日々の生活をしていく上で常に「金、金、金!」言っている。かくいう極楽トンボのわたしでさえ、口にこそ出さないまでも金(仕事の報酬)の呪縛から自由ではない。生活しなければならないからである。だから、何とかお金を稼ごうと、いろいろと仕事をする。お金はないよりあった方がいいからである。しかし、お金を得ることに汲々とした結果、お金の奴隷のようになってしまったら、お金とわたしの関係は対等なものではなくなると思う。お金のためだけに働く人生は空しい。

ずいぶん前にコラムニストの中野翠さんが「わたしは映画の肉親でも恋人でもなく友だちである」という言い方で、映画と自分の関係を語っていたことがある。大好きな映画だからと言って、肉親や恋人のようにべったりと親しみ合うのではなく、ある距離を置いた友だちのように付き合っていきたいというその意見に、わたしは大きくうなずいた。社長が口にした「友だち」という言葉も、その意見に通じるものを持っていると思う。つまり、映画もお金も、決してのめり込むのではなく、ある距離感を持って付き合うことが大事なのだ。さすが人生の先輩はいいことを言う。

※お金。(「暮らしラク」より)