悪魔島からの脱出~「パピヨン」 | 高橋いさをの徒然草

悪魔島からの脱出~「パピヨン」

DVDで「パピヨン」(1974年)を再見する。ふと正月らしい映画を見直したくなったのである。この映画のどこが正月らしいかは異論があるかもしれないが、スケールの大きい映画であることは間違いあるまい。実に30数年ぶりの鑑賞である。実話を元にした脱獄映画。

仲間の起こした殺人事件の犯人として、南米のギアナにある"デビルズ島"へ投獄された"パピヨン"と呼ばれる男。そこで知り合ったドガという国債偽造犯と仲良くなった男は、島からの脱獄を試みるが、失敗し、二年間の独房生活を強いられる。劣悪な環境に耐え、何とか生還した男は、再び脱獄を試みる。

わたしが微かに覚えていたのは、パピヨンに扮するスティーヴ・マックイーンが光が届かない暗い独房でゴキブリを食べる場面のみ。他の場面はすっかり忘れていた。改めて認識したのは、本作は過酷な刑務所生活を強いられる主人公のサバイバルの物語であると同時に、ダスティン・ホフマン扮するドガとの友情物語であることだった。監督はフランクリン・J・シャフナーで、堂々たる演出ぶりである。青々とした大海と薄汚れた刑務所内部が見事なコントラストを醸し出している。ジェリー・ゴールドスミスの甘美な音楽も作品の格調を高めている。

南米ギアナがどこにあるのかもわからず見た映画だが、フランスにおける政治犯・凶悪犯は、フランス領ギアナにある"デビルズ島"へ送られたという。アメリカにおける"アルカトラズ島"のようなものと考えればいいということか。古今東西、脱出不可能の刑務所が海に浮かぶ島にあるケースは多いが、海に囲まれた地理条件が、脱出を著しく阻むという意味では理にかなっている場所である。よく考えてみると、実在した"パピヨン"はフランス人である(アンリ・シャリエールという)から、アメリカ人であるマックイーンが演じることにはちょっと無理があると思うが、どうか。いずれにせよ、マックイーンの最盛期の一本であることは間違いないが。

※同作。(「映画.com」より)    

※南米ギアナ。(「Wikipedia」より)