歌い手募集! | 高橋いさをの徒然草

歌い手募集!

「合唱が六人、体調を崩して本日、出られなくなりました。第九を歌ったことがある人、今日、16時に来れる人、特に男声、あ、女声もです。助けてください!」

ちょっと前の話だが、フェイスブックでこんな記事を目にした。合唱のグループが急遽、必要になった歌い手を探しているわけである。わたしはこの募集記事を読んで、何か素敵だなと思った。それは、技術を持ったミュージシャンは、それがどんなグループであれ、すぐさまに仲間になり、観客を楽しませることができるのだなと思ったからである。そして、音楽は人種や国を超えるのだなあと改めて思った。

これが「出演者、募集!」という記事だったらどうだろう?    たぶんわたしは上記のような素敵さを感じなかったにちがいない。俳優も音楽家もグループで一つのものを作ることに変わりはないが、やはり、ちょっとニュアンスが違うと思うからである。

「役者が六人、体調を崩して本日、出られなくなりました。『ハムレット』を演じたことがある人、今日16時に来れる人、特に男優、あ、女優もです。助けてください!」

例えば、このような俳優を募集する記事があったとしても、「それは無理だろ」と思うだけである。音楽家は、その場でパッと対応できることが、俳優はそのようにいかないのである。両者は似て非なるものなのだ。「第九」を歌ったことがある人は、「第九」を通してすぐに仲間になれるという柔軟性が音楽家の素敵な点であると思う。それは必ずしも合唱団だけでなく、バンドや楽団も同じだろう。

フェイスブックで歌い手を募集した「第九」を歌う合唱団はピンチを乗り切り、コンサートを開催することができたのだろうか?

※合唱団。(「phote libraly」より)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ISAWO BOOKSTORE vol.1
「好男子の行方」
作・演出/高橋いさを
●2018年12月12日(水)~18日(火)
●オメガ東京(荻窪)