忘れられない日 | 高橋いさをの徒然草

忘れられない日

人間には忘れられない日というものがある。もちろん、それは人によって違うだろうが、いいことがあったにせよ、悪いことがあったにせよ、今まで生きてきて、決して忘れられない日というものがあると思う。日本人にとって、忘れられない日とは、やはり戦争に関係する日時だと思う。これらは個人の体験を超えて日本国民の体験だからである。

●1941年12月8日
日本軍による真珠湾攻撃。太平洋戦争勃発。
●1945年8月15日
終戦。天皇による玉音放送。日本は連合国の統治下に置かれる。

日本の近代において、これ以上の国民的な「忘れられない日」はないのではないかと思う。この次に忘れられない日は、国家的なイベントや世間を騒がせた大規模な事故や災害、事件ということになろう。

●1964年10月10日
東京オリンピック開催。
●1985年8月12日
日航123便墜落事故が起こる。乗客・乗員あわせて520名が亡くなる。
●1995年1月17日
阪神淡路大震災。この震災に続いて地下鉄サリン事件は起こる。
●2011年3月11日
東日本大震災。津波の被害でたくさんの犠牲者が出る。

以上はわたしの選択であって、これ以外にも社会的な出来事はたくさんある。そして、この次に来るのが、個人的な出来事であろう。自分の誕生日とか、結婚記念日とか、肉親の死んだ日とかそういう忘れられない日が存在する。わたしは、戦後生まれなので、戦争の思い出はまったく持っていないが、それでもなお、上記の開戦、終戦の日時はキチンと認識している。それは実体験ではなく、後天的に学習によって知った知識であるとは言え、わたしの日本人であるというアイデンティティーの一部を形成している。

「好男子の行方」という芝居を書いたわたしにとって、1968年12月10日はちょっと特別な日である。世に名高い三億円強奪事件が発生した日だからである。

※三億円強奪事件。(「アサヒ芸能」より)

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