「大地震」の思い出 | 高橋いさをの徒然草

「大地震」の思い出

パニック映画「大地震」(1974年)を見たのは、たぶん1975年だと思う。なぜ公開の年ではないかと言うと、名画座で見たからである。併映はロジャー・ムーア主演の「ゴールド」(1974年)だったと思う。洋画をテレビではなく劇場へ足を運んで見るようになった頃。以下は、当時のチラシである。

※「大地震」のチラシ。(「映画.com」より)

この映画にはちょっと思い出がある。前にも一度書いたことがあるが、"センサラウンド方式"と呼ばれる特殊な音響効果による上映で、「劇場が揺れる!」という触れ込みだった。まあ、"揺れ"はしなかったが、やたらにでかい音で観客席にいるわたしの身体が震えるような感覚があったことを覚えている。楽しいギミック感覚溢れた上映スタイル。

「あなたは震動する迫真の驚異!!」

キャッチ・コピーが謳っているのはそのことである。それにしても、日本語としてちょっとヘンなキャッチ・コピーである。「あなたは震動する!   迫真の驚異!」ならまだいいが、「あなたは震動する迫真の驚異!!」と一気にまくしたてられると「ちょっと待て!」と突っ込みたくなる。

しかし、本作に関する思い出はもう一つある。それは、このチラシのデザインをわたしはひどく気に入り、タイトル・フォント(字体)をよく真似て描いていたからである。「大」「地」「震」という大きな文字が立体的なコンクリートのように描かれて、そこにヒビが入っている。地震による町の損傷を字体で表現しているわけである。本作の原題は「EARTHQUAKE」というものだが、アメリカ版のオリジナルのタイトルも、そのようにヒビ割れていたから、日本人のデザイナーは、それを模してこのような字体を使ったにちがいない。なかなか工夫があるデザインではないか!   今、この映画を見直すと、ドラマとしては今一つの感があるのだが、当時、中学生のわたしは映画の迫力に満足して、中学校の教科書の余白に「大」「地」「震」といたずらがきをしてほくそ笑んでいたりしたのだ。懐かしい「大地震」の思い出。