戯曲「ダイヤルMを廻せ!」 | 高橋いさをの徒然草

戯曲「ダイヤルMを廻せ!」

「ダイヤルMを廻せ!」(フレデリック・ノット作/論創社)を読む。アルフレッド・ヒッチコック監督が作った映画の方が有名だと思うが、あの映画の原作に当たるのがこの戯曲である。本邦初訳。三幕六場構成。フレデリック・ノットは「暗くなるまで待って」の作者でもある。

ロンドンにあるアパートメントの一室。テニス・プレイヤーのトニーは、裕福な妻のマーゴの財産を我が物にするために、大学時代の友人レズゲイトを巧妙に誘い、妻の殺害を依頼する。しかし、犯行当日、レズゲイトは思わぬ事態に見舞われる・・・。

場面をアパートメントの一室に限定し、最小限の登場人物たちが虚々実々のやり取りをする面白い倒叙形式の推理劇だが、現代の裁判の基準から考えると、いくら愛人と不倫関係にあったとは言え、レズゲイトを死亡させたマーゴに死刑判決が出るのはちょっと無理があると思うが、どうか。ここは「名作裁判~あの犯人をどう裁く?」(ポプラ新書)の著者の森炎さんにご意見を伺いたいところである。

ところで、論創社はわたしの戯曲をたくさん出版してくれている出版社である。以前、編集部の方と酒席をご一緒した際に本作の出版予定があることを聞いていた。論創社で初めて戯曲集を出版したのは何を隠そうこのわたしのはずだが、論創社の編集部にはミステリ小説を偏愛する方がいて、それが「論創海外ミステリ」として結実していると想像される。日本で出版されていない推理劇の名作はいくつもあり、わたしが望む戯曲は次のようなものである。

●「探偵 スルース」(アンソニー・シェイファー作)
●「暗くなるまで待って」(フレデリック・ノット作)
●「デス・トラップ 死の罠」(アイラ・レヴィン作)

勝手なお願いだが、出版を強く望む次第である。可能ならわたしの願いをかなえてくださいませ。

※同書。(「Amazon.co.jp」より)