新香好き | 高橋いさをの徒然草

新香好き

お新香が好きである。居酒屋で酒のツマミを頼む時も、わたしのセレクションだと必ずと言っていいほどお新香を注文するし、丼もの(鰻丼やカツ丼)を食べる時もお新香がついていないとひどくガッカリする。家でご飯を食べる時も、漬物の専門店で白菜の漬物を買ってきて食べることも多い。そして、やはりわたしは日本人なのだと再認識する。お新香は、漬物とも言うが、もっと上品に言うと「香の物」である。

わたしがなぜお新香が好きかは正確に説明できないのだが、思い起こせば、わたしの父の影響であるように思う。父がお新香好きだったので、幼少期のわたしの家の食卓にはしばしばお新香があった。だから、そういう環境のせいで、わたしもいつしかお新香好きになったのだと思う。そういう食べ物はもう一つあって、それはわさび漬けである。初めてわさび漬けを食べたのがいつだったか、まったく覚えていないが、これも我が家の食卓によく並んでいた。子供の味覚の好みから言うと、とても美味しいとは思えない食べ物だと思うが、こちらもいつしか好物になった。

子供というものは、どんな時代も父親から大きな影響を受けて育つ。それは生き方のような大問題において顕著に表れるはずだが、このような味覚におけるそれも同じであると思う。基本的に父の好物をわたしも好むのだから。だから、アナタの好物の源泉を辿っていくと、それは幼少期のアナタの家の食卓へ行き着くはずである。

ところで、わたしの知り合いのとある芸能マネージャーの男性は、寿司屋で出てくる新生姜の甘酢漬け(ガリ)が好物だと聞き、驚いたことがある。聞けば、幼少期からオヤツ代わりに新生姜を食べていたゆえに、そのようになったらしい。まったく、他人の食べ物の好みは様々である。

※漬物。(「TENKI.jp」より)