戯曲の読書会 | 高橋いさをの徒然草

戯曲の読書会

先日、大学の教え子であるIくんが主宰する読書会にゲストとして呼ばれて参加した。Iくんが主宰する読書会は、「演劇井戸端会議&発語する読書会」と名付けられていて、不定期に演劇好きの人々が集まり、戯曲の読み合わせをして合評会を行うらしい。今回、拙作「バンク・バン・レッスン」を取り上げてくれたので、その作者として呼んでいただいたのである。都内の一室に老若男女、合計10名ばかりの人が集まり、戯曲を読み合わせする。いわゆる「読書会」と趣がちょっと違うのは、参加者たちが実際に発語して戯曲を読むという点であると思う。

こういう「戯曲の読書会」がどのくらい行われているのかわからないが、「実際に声に出して読んでみる」というアプローチが面白い。戯曲は声にして初めて戯曲になるという意味では、こういうやり方は、戯曲という表現形式の正しい味わい方だと思う。声に出さないとわからない面白さが戯曲にはあるのだ。何より、参加者が主体的に作品に関わることができる点がすばらしい。

「演劇においては、意味より音が大将なのだ」

これは故・井上ひさしさんの言葉だが、わたしの座右の銘の一つである。戯曲の台詞は、その言葉の意味より、どんな音で奏でられるのかが重要なのだという意味である。だから、わたしはその台詞を音にした時に気持ちいいかどうかを重視して戯曲を書く。

銀行員3「なんか・・・」
銀行員1「なんか何だよ」
銀行員3「なんて言うか・・・」
銀行員2「なんて言うか?」
銀行員3「つまり、その・・・」
銀行員1「だから何?」
銀行員3「・・・あれね」
銀行員2「何言ってんだよ」

今回、読み合わせをしてもらった「バンク・バン・レッスン」の冒頭部分のやり取りである。ラブレターを読むのは楽しいが、本人に直接「好きです!」と言われる方がもっと楽しい。

※参加者の皆さんと。