ふがいます | 高橋いさをの徒然草

ふがいます

アナタは床屋へ行った時、髪を切ってくれる床屋の人と世間話をするだろうか?   かく言うわたしは、そういう時に世間話をするのがとても苦手である。これは床屋だけの話ではなく、そういう接客場面において、わたしは世間話をすることが少ない。わたしの自宅の近くに頻繁に通うカウンター式の蕎麦屋があり、通い出してすでに15年余りになるが、わたしはそこの主人と世間話らしい世間話をしたことはほとんどない。

余り馴染みはないが、美容師と呼ばれる人は、髪を切る技術だけではなく、客とさりげない世間話する能力が問われる仕事だと思う。黙って髪だけ切ればいい仕事ではないと思うからである。楽しい会話ができる美容師は、やはり人気があると思う。また、バーのマスターなどという仕事も、同じように客と会話する能力が問われている仕事だと思う。すぐれたバーのマスターは、客のいい相談相手になるように思うからである。しかも、客の酒量によって相手に合わせた話題を振らなければならないという意味では、相当の力量が必要になると思う。

最近、歯医者に通っているということは、しばしばこのブログに書いているが、以上のような反省を踏まえ、女性の担当医と世間話をしてみようと思った。しかし、わたしの決意はすぐに潰えた。歯の治療中に世間話をすると、以下のようになると思ったからである。

歯の治療中のわたし。
わたしを治療している先生。
先生「これからお仕事ですか?」
わたし「(目で訴える)」
先生「お休み?」
わたし「(目で訴える)」
先生「今日はお休みですか?」
わたし「ふがいます」

歯科医院は世間話をしにくい場所である。

※歯の治療中。(「あおば歯科」より)