高校の演劇部 | 高橋いさをの徒然草

高校の演劇部

昨年に引き続き、長野県の伊那市へ高校生を対象にした演劇の講習会へ行ってきた。全部で30名ばかりの演劇部に所属する女子高校生にいろいろな演技の方法を提示して、実演してもらう。昨年もそうだったが、男子は一人もいない。確かにわたしが高校生の時も、演劇部には男子はいなかったように思うが、演劇部に男子がいないのはちょっと不思議な現象である。これはなぜなのだろう?

勝手な想像だが、男子高校生に演劇は「格好いいもの」という認識が乏しいということなのではないか。確かにサッカー部や野球部のような肉体が躍動するような格好よさは演劇部には乏しい。ハムレットを演じても、それを格好いいという感覚は男子高校生にはないと思う。たぶん男子高校生にとって演劇は「女子がやるもの」という認識が強いのではないか。わからないでもない。わたし自身、高校生の頃、演劇部というと、化粧臭いイメージを持っていた。演劇部にいる男子に対して「男のくせにメーキャップなどしてみっともない!」というような偏見を持っていたように思う。確かに演劇には、人前で身をくねらせて観客に媚を売る側面がないではない。また、「演技」という言葉は、日常的に使う時に「他人を欺き嘘をつく」という意味合いがあり、そういう点もウルトラマンや刑事もののドラマを通じて培った正義をよしとする男子高校生を演劇から遠ざける要因になっているのかもしれない。

演劇を生業(なりわい)とするわたしとしては、それらはすべて偏見であり、演劇ほど「複数の人間が足並み揃えて一つの目的を達成する喜び」を体験できる器はなく、最高に「格好いいもの」だと思うが、わたしがいくら力説しても、男子高校生はなかなか演劇部へ入ろうという気分にはならないのかもしれない。かく言うわたし自身もかつてはそうだったのだから。

※高校の演劇部。(「守口東高等学校」より)