実話の映画化~「パトリオット・デイ」 | 高橋いさをの徒然草

実話の映画化~「パトリオット・デイ」

DVDで「パトリオット・デイ」(2016年)を見る。ボストン・マラソンの最中に起こった爆弾テロを題材に、犯人を追う捜査官の活躍を描くサスペンス・アクション映画。主演はマーク・ウォールバーグ。

2013年、ボストン・マラソン開催中のゴール地点で爆弾テロ事件が起こる。警備に当たっていた地元警察官のトミーは、FBI捜査官に協力しながら、犯人の特定と逮捕に尽力する。防犯カメラの映像から浮かび上がったのは、チェチェン出身の若い兄弟。トミーらは、逃亡を図る犯人に迫る。

上記の内容だけなら本作はたぶん1時間50分の映画である。しかし、本作は2時間13分ある。長くなった23分は被害者たちの人間ドラマを描くために使われる。そして、その部分を通して描かれる被害者たちと失意に沈むボストン市民の再生の物語が、本作を単なる「サスペンス・アクション映画」ではなくしている要因である。「サスペンス・アクション」と「人間ドラマ」は、本来、相性が悪い。なぜなら、どちらか一方に傾きすぎると、それぞれの長所が相殺されかねないからだ。その点で、本作はそれぞれの物語のバランスがよく、うまく着地点へ到達しているように思う。強いて難を言えば、そのような構成上、爆弾テロを起こした二人の兄弟を卑劣な悪役にせざるを得なかった点であろうか。

本作には実写の映像が随所に挟み込まれ、ドキュメント的な感興を醸し出す。映画の結末に実際にこの事件に関わった捜査官や被害者が実名で登場し、事件について語るという構成がとられている。こういう手法に賛否はあるのだと思うが、これはこれでアリだとわたしは思う。そして、少年時代に映画館で見た「ヒンデンブルグ」(1975年)という映画のことを思い出した。同作は、実際に起こった「ヒンデンブルグ号爆発事故」(1937年)の真相に迫るミステリー・タッチのスペクタクル映画である。監督は「サウンド・オブ・ミュージック」「ウエスト・サイド物語」のロバート・ワイズ。その映画において、ヒンデンブルグ号の爆発炎上場面は、フィクションの合間に実写がふんだんに使われていて、迫力満点だった。「実際に起こったこと」の断固とした説得力。

※同作。(「映画.com」より)