二本の韓国映画 | 高橋いさをの徒然草

二本の韓国映画

DVDで韓国映画を二本見る。一本は「トンネル~闇に鎖(とざ)された男」、もう一本は「善惡の刃」である。

●「トンネル~闇に鎖された男」(2017年)は、トンネルの崩落事故により、トンネル内に閉じ込められた男とそれを何とか助け出そうとする人々の姿を描く災害パニック映画。トンネル内に閉じ込められた人々を描くパニック映画と言えば、「デイライト」(1996年)という先例があるが、あちらはグループの脱出劇だったの対して、こちらは基本的に一人(正確には途中で命を落とす若い女と犬一匹がいるが)の脱出劇である。被害にあう男を演じているのはハ・ジョンウ。「チェイサー」(2008年)で猟奇殺人犯を演じていた人である。崩落場面は迫力十分で、悪夢のような恐怖感に慄然とさせられる。崩落以降は、押し潰された狭苦しい車内を舞台にした一人芝居が続き、それがちょっと単調にも思えるが、閉じ込められた男をめぐる救出隊、政府関係者、マスコミ、妻という四者の立場の違いが表現されていて興味深い。監督は快作「最後まで行く」(2015年)のキム・ソンフン。

●「善惡の刃」(2017年)は、殺人事件の冤罪で処罰され、10年間の服役を強いられた青年の再審をめぐるドラマ。実話の映画化だという。再審を勝ち取るために奔走する弁護士と青年の"バディもの"という趣があり、最初は対立していた二人が次第に友情を獲得していく様は心が和む。タイトルから韓国映画特有の血なまぐさい内容を予想したのだが、そういう要素はほとんどなく、ドラマは青年の犯行が不可能だった証拠を見つけ出そうとする弁護士の行動に費やされる。そこにミステリ的な面白さがある。弁護士を演じるのはチョン・ウ、青年を演じるのはカン・ハヌルである。前者は大泉洋に、後者は木村拓哉に見えて仕方なかった。

どちらの映画も独自の題材を扱っていて、新しい題材で映画を作ろうとしている韓国映画のバイタリティーを感じる。日本でこういう映画を作ることは可能なのだろうか?

※二本の韓国映画。(「映画.com」より)