森林恐怖症 | 高橋いさをの徒然草

森林恐怖症

この世には様々な恐怖症が存在する。割合に一般的なそれは、対人恐怖症、高所恐怖症、閉所恐怖症、尖端恐怖症などであろうか。説明するまでもないが、これらはそれぞれ人間がとても苦手、高いところがとても苦手、密室がとても苦手、尖ったものがとても苦手という症例である。そんな恐怖症の一つに「ハイロフォビア」という恐怖症があることを知った。「森林恐怖症」と訳されるらしいが、要するに森や木を恐怖する症例である。

●森林恐怖症
森や木そのものを見ることに恐怖を感じる。特に真っ暗な森林などへの恐怖が強い。また、森の中で迷子になることを極端に恐れ、森がある場所を回避しようとする。(「ailovei」より)

わたしはたぶん「ハイロフォビア」ではないと思うが、夜の森を好きか嫌いか聞かれたら嫌いであると答える。「夜の森が大好きだ!」という人間もこの世にはいるだろうが、大体の人は夜の森に不気味さを感じるのではないか。何かが潜んでいそうな気配が恐怖を煽る。そんな人間の恐怖感覚にホラー映画の作り手が目をつけないわけはなく、そのものズバリ「クライモリ」(2003年)という映画があった。どんな内容だったかよく覚えていないが、暗い森に迷い込んだ若者たちが恐怖の体験する話であったと思う。

上記の引用文献の情報によると、恐怖症には他に「姑恐怖症」「文字恐怖症」「へそ恐怖症」「蟻恐怖症」「花恐怖症」「黄色恐怖症」「ピーナッツバター恐怖症」などがあるらしいが、この世にあるすべてのものは恐怖の対象になりうる。家の中では、「ハサミ恐怖症」「ドア恐怖症」「階段恐怖症」「電話恐怖症」、一歩外に出れば「車恐怖症」「電柱恐怖症」「鳥恐怖症」「エレベーター恐怖症」「吊革恐怖症」もありうる。要するに何でもありなのだ。

しかし、上記の「ハイロフォビア」にわたしがちょっと理解を示すことができるのは、やはり、夜の森は人類共通の普遍的な恐怖を煽る何かを持っているように思うからである。それはたぶん暗い森に生い茂る様々な木々が、人間に様々なものを想像させる契機になるからにちがいない。なぜなら、恐怖の正体は恐怖する対象そのものにあるのではなく、実は恐怖を感じる人間の想像力の方にあるはずだからである。つまり、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ということである。

※夜の森。(「gooブログ」より)