ヒトラー暗殺計画~「ワルキューレ」 | 高橋いさをの徒然草

ヒトラー暗殺計画~「ワルキューレ」

DVDで「ワルキューレ」(2008年)を見る。実話を元にしたトム・クルーズ主演のサスペンス映画。

第二次世界大戦下のドイツ。ドイツ国防軍の反ヒトラー派の将校たちは、ヒトラー暗殺を試みるが失敗。シュタウフェンベルク大佐を中心とした彼らは、最後のヒトラー暗殺計画"ワルキューレ作戦"を決行する。シュタウフェンベルクは自らの手で作戦本部にいるヒトラーの元に爆弾を仕掛け、爆弾を破裂させる。「ヒトラー総統死亡」の報がドイツ中を駆け巡る。それに乗じて反ヒトラー派の人々は、政権を奪還したかに見えたが・・・。

ヒトラー暗殺を主題にした映画はいくつかあり、わたしが知る限りでは「ヒトラー暗殺、13分の誤算」(2015年)が思い浮かぶ。しかし、連合国の兵士や民間レジスタンスではなく、同じドイツ軍の将校たちがヒトラー暗殺未遂事件を起こしていた歴史的事実をわたしはこの映画を通して初めて知った。アドルフ・ヒトラーは、外側からだけでなく内側からも狙われていたのたということか。本作がちょっとユニークなのは、主人公の作戦の成功を描いているのではなく、失敗を描いている点か。そういう意味では、実在するフランス大頭領暗殺に失敗する殺し屋を描く「ジャッカルの日」(1972年)の結末のような苦い余韻を持つ。

トム・クルーズは、隻眼・片腕の主人公に扮するが、この悲劇のドイツ人将校を演じるには他作品での明るいイメージがちょっと邪魔をしているように感じる。この人は、ヨーロッパ的と言うより、やはりアメリカ的な印象が強い役者さんだと思う。実際のシュタウフェベルクがどういう人かはよく知らないが、もっと陰影のある役者さんが演じると、悲劇的な結末にもっと味わいがあるのではないか。

それにしても、アドルフ・ヒトラーという「二十世紀最大の悪党」は、当時、かくも絶大な権力を持っていたのだなと再認識する。誰も彼も「ハイル、ヒトラー!」と右手を挙げてヒトラーを称揚するその姿に異様なものを感じる。当時の人々はなぜそうまでしてヒトラーを信じることができたのだろう?   アドルフ・ヒトラーは、1945年に56才で自殺を遂げる。つまり、今のわたしの年齢である。

※同作。(「Y!映画」より )