犯罪スリラーの佳作~「最後まで行く」 | 高橋いさをの徒然草

犯罪スリラーの佳作~「最後まで行く」

DVDで「最後まで行く」(2014年)を見る。韓国製の犯罪サスペンス映画。友人の俳優さんに「何か面白い韓国映画はないですか?」と聞いたら本作を紹介され、一見に及ぶ。これは思わぬ拾い物だった。

殺人課の刑事ゴンスは母の葬式の日に交通事故で死亡事故を起こす。死体の隠蔽を図った彼は死体を母の棺桶に入れて一緒に埋葬し、その場をしのぐ。そんな時、事故を目撃したという謎の男から脅迫電話がかかってくる。追い詰められていったゴンスが突き止めた脅迫者の正体は・・・。

主人公が死体を隠し、事実の発覚を阻止しようとする件までは、ほとんどコメディと言ってもいいタッチだが、謎の脅迫者が現れてからは俄(にわか)にサスペンスが高まる。そして、脅迫者が主人公に要求するものが金ではなく隠した死体であるという展開も謎を深める。刑事が轢き殺した死体にいったいどんな秘密が?   物語は二転三転し、次第に明かされる真相も意外性と説得力がある。アクション場面にも迫力と創意があり、スピーディーな展開で最後まで一時も飽きさせない。ラストシーンにも皮肉が利いている。たいしたもんである。

偶然だと思うが、同じ2014年にちょっと似た趣向の映画がある。このブログでも取り上げたことがあるアメリカ映画「ダウト・ゲーム」である。こちらの主人公は刑事ではなく検事だが、彼も交通事故で人を殺してしまい、それを隠蔽しようとして窮地に追い込まれていくという話だった。事故で殺した被害者が意外な人間だったという展開も本作によく似ている。

韓国の犯罪映画にありがちな血みどろの残酷描写は控えめだが、よく練り込まれたストーリー展開と役者たちの熱演が光る犯罪スリラーの佳作である。刑事はイ・ソンギュン、脅迫者はチョ・ジヌン、監督はキム・ソンクン。


*同作。(「映画.com」より)