韓国の犯罪サスペンス映画 | 高橋いさをの徒然草

韓国の犯罪サスペンス映画

DVDで韓国の犯罪サスペンス映画を二本見る。

「極秘捜査」(2015年)は、1970年代に韓国で起こった身代金目的の誘拐事件を元にした犯罪サスペンス映画。金持ちの幼い娘が誘拐される。犯人逮捕をめぐって手柄争いをする警察官たちを尻目に、主人公の刑事は幼女の両親が頼る占い師とともに犯人を追う。「誘拐事件の捜査に占い師が協力する」という設定が面白く、刑事と占い師の「バディもの」の趣がある映画だが、合理的な疑問に邪魔されて(つまり、占いの信憑性)どうしても納得できないままに映画を見終わる。劇中に「オーメン」(1976年)のポスターが出てきて思わずニンマリ。主人公の刑事を演じているのは「チェイサー」(2008年)で犯人を追う風俗店の店長を演じていたキム・ユンソク。

「鬼はさまよう」(2015年)は、女ばかり狙う連続殺人鬼と犯人に妻を殺された若い夫とその義理の兄である刑事の三つ巴の死闘を描く復讐をテーマにした犯罪アクション映画。殺人鬼を早い段階で警察に逮捕させて、それをプロローグとして意外な展開をする作劇が巧み。原題は「殺人依頼」ということだが、このタイトルが本作の内容をよく語っている。それを「鬼はさまよう」とした邦題は悪くないが、「さまよう刃」(東野圭吾)を意識しているということか。刑務所に収監された殺人鬼とそれをつけ狙う刺客のシャワー室を舞台にした全裸の格闘場面に創意があるが、「イースタン・プロミス」(2008年)という前例がある。無惨に殺された善良な女をめぐり、鬼となった復讐者が凶悪な犯人を執拗に追い求め復讐を遂げようとするという物語の展開は、韓国犯罪サスペンス映画の定番だが、ちょっと食傷気味なのも確かである。

取り上げる韓国映画の種類を見てもらえばわかると思うが、わたしの韓国映画への関心は、もっぱら「犯罪サスペンス」系のもので、「ラブ・ストーリー」系や「コメディ」系に向けられない。


*「鬼はさまよう」(「Amazon.co.jp」より)