問題監督 | 高橋いさをの徒然草

問題監督

今日は映画に関するマニアックな話である。話題にするのは、エリッヒ・フォン・シュトロハイムである。わたしがこの映画監督・俳優の存在を知ったのは、ビリー・ワイルダー監督の「サンセット大通り」(1950年)である。シュトロハイムは、その映画で落ちぶれた往年の映画女優(グロリア・スワンソン)の執事の役を演じていた。精悍な顔立ちだが、どこか得体の知れない不気味な執事で、強烈な印象が残った。(当時65才)そして、この俳優がかつては映画監督として有名な人だったらしいことを後に知った。サイレント時代に活躍したシュトロハイムとは以下のような人である。

「エリッヒ・フォン・シュトロハイム(1885年9月22日 ―1957年5月12日)は、オーストリアで生まれハリウッドで活躍した映画監督・俳優。映画史上特筆すべき異才であり、怪物的な芸術家であった。徹底したリアリズムで知られ、完全主義者・浪費家・暴君などと呼ばれた」(Wikipediaより)

「徹底しすぎる完全主義により、ほとんどの作品で予算超過・長尺となり、それが原因で会社やスタッフ、俳優とも何度も衝突している。結局シュトロハイムは、43歳にして映画づくりの道を断たれ、呪われた監督となった」と引用資料にある。つまり、シュトロハイムはいわゆる「問題監督」だったわけだ。また、シュトロハイムがビリー・ワイルダー監督と初めて会った時、ワイルダーがシュトロハイムのことを「偉大な映画監督」と賞揚したら、自ら「最も偉大な映画監督、だ」と訂正を求めたというエピソードがあることを知った。この発言からも相当に驕慢な性格の人であったろうことが伺える。

たぶんシュトロハイムは典型的な天才型の映画監督だったのだと思う。天才ではあったが、現実とまったく折り合いがつけられない芸術家肌の天才。その破天荒さは現在の映画作りの尺度から見ると、ほとんど狂気の沙汰であったにちがいない。なかなか見る気にならずに先送りしているが、この問題監督が作った「愚かなる妻」と「グリード」をいつか見たいと思う。


※エリッヒ・フォン・シュトロハイム監督。(「ALL posters」より)