霧の国の人たち | 高橋いさをの徒然草

霧の国の人たち

かつて劇団ショーマで「MIST~ミスト」というタイトルの芝居をやったことがある。タイトルだけ決まっていて、内容は後からできた脚本だ。(笑)”MIST”という名前の高価な宝石をめぐる強奪アクション演劇である。
MISTとは本来「霧」を意味する。ミスト・サウナとは霧のサウナのことだ。
話は変わるが、謎解きの推理小説の本場はどこの国かご存知か。英国である。イギリス人は謎が大好きな国民なのではないだろうか。では、なぜイギリス人は謎が好きなのか? それは霧のせいだとわたしは思う。ロンドンは霧が濃い街だと聞く。霧が身近にあるイギリス人たちは、霧の中にいろんなものを想像した人たちではないかと思う。霧に覆い隠されてそこに何があるのかわからないからこそ頭=想像力を使う。そんな霧の国の人たちが謎解きの推理小説=MYSTERY(ミステリ)に多大な関心を持つのは事の必然だ。
ロンドンは”切り裂きジャック”を生んだ都市だ。”切り裂きジャック”は実在したかもしれないし、実在しなかったかもしれない。けれど、重要なのは”切り裂きジャック”の実在の有無ではなく、”切り裂きジャック”を生んだロンドンという場所の特異性である。もっと言えば、”切り裂きジャック”を必要とし、育てたたイギリスの人たち想像力である。

言うまでもなく、MYSTERYの語源はMISTに由来する。