父はNHKマイルカップからダービー、『変則2冠』を制したキングカメハメハ。
8戦7勝、3着1回。3歳で天皇賞秋へ挑戦する2週間前に右前浅屈腱炎を発症。
NHKマイルカップは2着コスモサンビームに5馬身差の圧勝。
ダービーは2分23秒3、従来のレコードを2秒も上回るスピードで完勝。
まさに世代の『キングオブキング』だった。
母はアドマイヤグルーヴ。
その母は『女帝』といわれたエアグルーヴ。オークス馬であったエアグルーヴは古馬になって牡馬相手に活躍。バブルガムフェローを破って天皇賞秋制覇。ジャパンカップ2着2回、ピルサドスキーにクビ差負けた1997年、エルコンドルパサーに敗れた1998年はスペシャルウィークとの2着争いを死守した。
祖祖母ダイナカールはオークス馬。
父サンデーサイレンス、『超良血』として生まれた母アドマイヤグルーヴは桜花賞3着、オークス7着、秋華賞2着と載冠ならずも、エリザベス女王杯を2年連続制覇。祖母・母・娘、『母仔3代G1級制覇』の偉業を達成している。
2012年、3月22日。父母の実績からも、活躍なくしては考えられない『血の宿命(さだめ)』を背負って生まれてきたのがドゥラメンテだ。
『良血』ぞろいのノーザンファームにあって、『超良血』と呼ばれるドゥラメンテ。
ただ、いくら『良血の誇り』を身にまとっても活躍できる保証など、どこにもない。
現実に、祖母エアグルーヴから11頭の仔が生まれ、アドマイヤグルーヴ、フォゲッタブル、ルーラーシップ、グルヴェイグ、重賞勝ち馬は4頭だけだった。
母アドマイヤグルーヴはすでに5頭の兄姉を産んでいるが、重賞勝ち馬はまだ出ていない。
『血で走るサラブレッド』、だが、血だけでは走れないのもサラブレッドだ。
当歳の10月に母アドマイヤグルーヴが胸部出血のため急死。
最後の産駒となってしまったドゥラメンテ。
ただ、走ることに集中するしかなかった。
美浦・宣行厩舎に入厩。『初めて会った時から圧倒的なオーラを感じた』という堀調教師に見守られ、鍛えられたドゥラメンテ。
初出走は2014年、2歳10月、東京・芝1800m新馬戦。単勝1.4倍の圧倒的1番人気も、2着。
最速の上がり脚を使いながらも、先に抜け出した4番人気ラブユアマンに追いつけなかった。
気分よく走っているだけでは勝てない、それが勝負の世界。
悟ったか、ドゥラメンテ。11月・未勝利戦、ショウナンハルカスを6馬身ちぎっての勝利。
3歳初戦は、2月・セントポーリア賞(500万下)。2着ウェルブレッドに5馬身差、圧勝。
圧倒的な力でぶっちぎる。父キングカメハメハ、母アドマイヤグルーヴから受け継いだ『血』の良さを発揮。
『王道』へまっしぐら。それが亡き母へ捧げる最大の手向けと信じていた。
アドマイヤグルーヴの仔、ドゥラメンテ。いわれる限り・・・・・・がんばらねば。
単勝1.8倍、もはや断トツ人気が普通になってしまったドゥラメンテ。
2月15日、共同通信杯(G3)。初重賞制覇も通過点に思われた。
だが、ドゥラメンテはレース前から肌で感じていた。強敵ぞろいのメンバー・・・・・・リアルスティール、アヴニールマルシェ、アンビシャス。これが、重賞か!
気合の入り過ぎが、かかりぎみになり鞍上・石橋脩を困らせた。
前に行ったり、下がったり、直線は自慢の末脚で差し込んだもののディープインパクト産駒リアルスティールに追いつけず2着。
ライバル出現となった。
トライアルを使わず、ぶっつけで皐月賞挑戦を決めたドゥラメンテ。
獲得賞金順では出走も危ぶまれたが、出走回避馬が出たためフルゲートにはならず無事出走となった。
弥生賞を勝って3戦3勝サトノクラウンが1番人気。
スプリングS2着、共同通信杯でドゥラメンテを破ったリアルスティールが2番人気。
スプリングSを勝って3戦3勝のキタサンブラックが4番人気。
ドゥラメンテは3番人気。鞍上はミルコ・デムーロだ。
2番手キタサンブラック、5番手リアルスティール、後方5番手サトノクラウン、後方2頭目にドゥラメンテ。
淡々としたペースで直線、キタサンブラックとリアルスティールの競り合い。抜け出したリアルスティール・福永祐一が勝利を勝利を確信した時、大外から突っ込んできたのがドゥラメンテだった。
やや番手を上げるも後方内で詰まり、身動き取れないドゥラメンテが信じられない動きの横滑りで大外へ。
後ろの馬に迷惑をかけたが、自身も崩れた態勢。
立て直してからの脚は、まさに豪脚を超えた鬼脚。
アッという間に迫り、リアルスティールを1馬身半、突き放した。
ミラクルな脚で皐月賞、『1冠』を獲ったドゥラメンテ。
めざすはダービー、『2冠馬』へ。
2012年生まれ、6897頭の頂点こそ『日本ダービー制覇』。
父キングカメハメハが上り詰めた頂。
母アドマイヤグルーヴが、わが仔へ託した夢。
勝つために父母からもらった血。勝つために、一戦一戦、ひたすら走り培った力。
ドゥラメンテには、かけがえのない一戦。
単勝1.9倍。圧倒的1番人気となったドゥラメンテ。
ライバルは皐月賞2着リアルスティール、皐月賞1番人気も6着と敗れたサトノクラウン。
新たなライバルは、青葉賞を勝った『夢一族』のレーヴミストラル、京都新聞杯を勝って乗り込んできた『サトノ』の二の矢、サトノラーゼン。
先行したのは横山典弘が乗るミュゼイリアン。外枠17番からキタサンブラックが2番手につけた。
中団外につけたドゥラメンテ。
頂点を獲る戦い。正攻法、『王者』の戦いを見せるのか!
サトノラーゼンが内で並びマーク。
後ろでマークするのはレーヴミストラル。
後方5,6番手、前後して行くのはリアルスティール、サトノクラウンだ。
1000m通過58秒8。淀みのない速い流れ。
直線に入り、ズラリと横に広がった馬群。
懸命に粘るキタサンブラック、ミュゼエイリアンが力尽きた、直線坂上。
ゴールまで300m。
外から満を持して先頭に立ったのがドゥラメンテだ!
その内から伸びて来るサトノラーゼン!
大外から脚を伸ばすサトノクラウン!
馬群を割るのはリアルスティール!
頂点をめざすのは、誰とて同じ。
騎手たちのムチに、叱咤激励に応えて激しく伸びるッ!
すべてのライバルたちの熱き息遣いを感じながら、
ドゥラメンテは前を見た。
ひたすら、
めざすゴール。
負けないッ!堂々と、堂々と王道を行く。
栄光のゴールに、見えた輝き。
勝ちタイム、2分23秒2。
キングカメハメハ、2分23秒3。
ディープインパクト、2分23秒3。
わずか0.1秒なれど、偉大な父キングカメハメハを、あのディープインパクトを・・・・・・超えた。
ダービー後、放牧時に発見された両橈骨遠位端骨折。
『3冠』は諦め、長い長い休養となった。
4歳となって、9カ月ぶり復帰戦となった2月・中山記念を勝利。
3月はドバイに挑戦。ドバイ・シーマクラシックではレース前に落鉄、蹄鉄の打ち直しもうまく行かずに、そのまま出走。イギリス・ポストポンドの2着と敗れた。
帰国第一戦に選ばれた6月・宝塚記念は、牝馬マリアライトの大駆けをクビ差とらえきれず2着。
レース後、歩様が乱れ鞍上・デムーロが下馬。左前ハ行の診断がなされ、様子見となったが、6月29日、獣医師から能力喪失を発表され引退となった。
9戦5勝、2着4回。ダービーで燃え尽きたかのように熱き走りの消えたドゥラメンテ。
それでも2着は外さない『王道』の強さを見せ、ターフを去ったドゥラメンテ。
ライバル・・・・・・リアルスティール、サトノクラウン、キタサンブラックの活躍を耳にし、故郷・北海道でいち早く種牡馬生活を送るドゥラメンテ。
2018セレクトセールでは重賞4勝、桜花賞3着のアイムユアーズとの仔が、1億8000万円で落札。
2017年、種付け数280頭を超えたドゥラメンテ。
キングカメハメハ最高の後継種牡馬となるか!
ドゥラメンテ、『王道』にまだ終わりはない。、