2012年、オルフェーヴルとの死闘を制したジェンティルドンナ。
 
2013年はゴールドシップ、エシンフラッシュを相手に、2着デニムアンドルビーにハナ差勝ち。
 
史上初のジャパンカップ連覇を成し遂げた。
 
 
そして、一年。
 
5歳の冬を迎え、年内で引退を決めているジェンティルドンナが大偉業、ジャパンカップ3連覇に挑む。
 
 
 
数多くいるディープインパクト産駒G1馬の中でも代表産駒と言っていいジェンティルドンナ。
 
『牝馬3冠』、ジャパンカップ連覇し、さらに高みをめざした。
 
 
5歳となって、3月・ドバイシーマクラシックを完勝、G1・6勝目。
 
6月・宝塚記念は生涯最悪の9着と敗れ、秋、11月・天皇賞秋はスピルバーグの大駆けにあい2着。
 
大目標、ジャパンカップで『有終の美』となるか?
 
衰えぬ気力。鞍上にライアン・ムーアを迎え、『猛女』の雄叫びを上げるか!
 
 
 
 
ジェンティルドンナに対抗するのは、男勝りの若き『女王』ハープスターか。
 
父はジェンティルドンナと同じディープインパクト。祖母に『名牝』ベガ(桜花賞・オークス2冠馬)をもつ良血。伯父にアドマイヤベガ(ダービー馬)、アドマイヤドン(芝・ダートG1併せて7勝)。
 
国内では7戦5勝、2着2回。桜花賞を制し、阪神ジュベナイルフィリーズ(ハナ差)2着、オークス(クビ差)2着。
 
 
秋は、ジャスタウェイ、ゴールドシップとともに凱旋門賞に挑戦。
 
日本馬最先着も6着に敗れ、帰国初戦でジャパンカップ、偉大なる先輩牝馬ジェンティルドンナに挑む。
 
後方一気直線強襲、レーススタイルにブレはないッ。
 
 
 
 
国際クラシフィケーションにおいて、世界ランク単独1位となったジャスタウェイ。
 
父ハーツクライ、母シビル。

前年、天皇賞秋でジェンティルドンナに4馬身差、圧勝。
 
15戦2勝、2着5回、3着1回。重賞善戦マンが『王者』ジャスタウェイへと変身した。
 
 
5歳になり、前哨戦となる中山記念を勝利後、ドバイへ飛んだ。
 
3月・ドバイデューティフリー、同じ日本馬トウケイヘイローが逃げる展開。11頭立て後方3番手から、2着ウェルキングトリクスに6馬身差の圧勝。
 
『世界ランク1位』という、とんでもない栄誉を得た。
 
 
帰国初戦の安田記念をグランプリボスとハナ差の大接戦、勝利。勇躍、フランス凱旋門賞に挑戦した。
 
トレヴの7着。消化不良のまま帰国。初戦に選んだのはジャパンカップだ。
 
芝2400mに不安を抱えながらも『世界ランク1位』、心地よい響きを感じずにはいられない。
 
ジェンティルドンナを、ハープスターを、『世界ランク1位』がまとめてだ。ぶち抜くか!。
 
 
 
 
母は世界の牝馬、アメリカンオークスを制したシーザリオ。
 
6戦5勝、2着1回。繋靭帯炎を発症し早々と引退した名牝。
 
その母の血を持て余すのか?完全に生かし切れないのがエピファネイアだった。
 
 
父シンボリクリスエス。新馬戦から3連勝でラジオNIKKEI杯2歳Sを勝ち、同世代のライバル、キズナに土をつけ、エリートコースに乗った。

唯一の弱点は、前向きすぎる気性のエピファネイア。
 
前へ、前へと行きたがる故のかかり気味走行。
 
肝心なところで末の切れを失くし、皐月賞2着、ダービー2着。
 
菊花賞は5馬身差の圧勝。ようやくクラシック最後の『冠』を獲った。
 
 
4歳になって、4月・産経大阪杯3着、香港・クイーンエリザベス2世カップで4着に沈み、休養。
 
秋、半年ぶりの実戦となった天皇賞秋は、後方から伸びずに6着。
 
相変わらず折り合いの難しさに課題が残った。
 
潜在能力は認めながらも、行きたがる気性に悩む鞍上・福永祐一。
 
ひたすら折り合いに重点を置いた騎乗の福永。
 
これでいいのかッ?葛藤もあった。
 
 
ジャパンカップでは、ジャスタウェイに騎乗することとなった福永祐一。
 
栗東・角居勝彦調教師は『日本人ほど折り合いに気を使わない外国人騎手』の観点から、外国人騎手クリストフ・スミヨンを鞍上に招いた。
 
はたして、その決断はどう出るのか?
 
 
 
 
3歳代表として出走したのは、皐月賞馬イスラボニータ、ダービー馬ワンアンドオンリーだ。
 
 
天皇賞春連覇のフェノーメノ、天皇賞秋を劇的に制覇したスピルバーグ。
 
 
前年ジャパンカップ2着のデニムアンドルビー、3着トーセンジョーダン。
 
 
外国からは、愛ダービー馬トレーディングレザー、バーデン大賞勝ちのアイヴァンホウ、アーリントンミリオン4着のアップウィズザバーズ、3頭が出走した。
 
 
 
11月30日、ジャパンカップ。
 
1.ジャスタウェイ
2.アイヴァンホウ
3.ジェンティルドンナ
4.エピファネイア
5.ヒットザターゲット
6.ハープスター
7.アップウィズザバーズ
8.デニムアンドルビー
9.イスラボニータ
10.ワンアンドオンリー
11.トーセンジョーダン
12.タマモベストプレイ
13.ディサイファ
14.サトノシュレン
15.スピルバーグ
16.フェノーメノ
17.アンコイルド
18.トレーディングレザー
 
 
1番人気ジェンティルドンナ、2番人気ハープスター、3番人気ジャスタウェイ。
 
4番人気エピファネイア、5番人気イスラボニータ。
 
 
 
良馬場発表、だが、前日の雨で芝はかなりの水分を含んでいた。
 
スタートすぐに外から先頭に立ったのはサトンシュレン。
 
タマモベストプレイが行って、3番手につけたエピファネイア。
 
4番手はアンコイルド。先団4頭の後ろにつけたのが、
 
トーセンジョーダンと並ぶジェンティルドンナだ。外に外国馬トレーディングレザー。
 
 
ジェンティルドンナを見る形のイスラボニータ、ジャスタウェイ。
 
その後ろにフェノーメノ、ワンアンドオンリー、外国馬アイヴァンホウ。
 
ハープスターが続く。
 
 
後方3頭目を行くのがスペルバーグ。
 
最後方はデニムアンドルビーだ。
 
 
 
1000m通過、59秒6。水分を含んだ芝としてはハイペース。
 
 
それでも、前に前に行きたがるエピファネイア。
 
『コーナーごとに抑えればいい』ごとにムリに抑えはしないスミヨン。
 
凱旋門賞でオルフェーヴルを2度の2着に持ってきた名手。
 
速いペースに乗っかるエピファネイアを強引に落ちつかせようとは、しなかった。
 
だが、
 
コーナーでも抑えることができないエピファネイア。
 
 
さすがのスミヨンも、最後はエピファネイアの秘めたパワーに期待するしかなかった。
 
 
3,4コーナー、早くも脱落するサトノシュレン。
 
先頭に立ったのはタマモベストプレイ!
 
外から迫るアンコイルド、最内から外めに進路を取るエピファネイア。
 
 
この若干の進路変更のスピードダウン。
 
エピファネイアにとって、大切な『ひと息つく』こととなった。
 
 
押し上げる後方集団。
 
外国馬トレーディングレザーが故障を発症、一気に下がった煽りを受けたのがハープスターだ。
 
完全に行き脚を削がれた!
 
 
 
直線、懸命に粘ろうとするタマモベストプレイ!
 
外から迫ろうとするアンコイルド!
 
その間を割って、一気に先頭に立ったのがエピファネイアだ!
 
 
先頭に立つや、一気にスパートした!
 
これが、この馬のポテンシャルかッ?
 
 
ムチを入れながらも、一番驚いたのは鞍上のスミヨンだ。
 
 
外から迫るジェンティルドンナ・ムーア!
 
水分を含んだ馬場のせいか?鈍い切れ。
 
 
その外から、突っ込んできたのはジャスタウェイ・福永祐一だ!
 
じっくり内で溜めて、外に持ち出し差し込んできた。
 
何の戸惑いもない切れ味!戸惑ったのは、はるか前にいたエピファネイアだッ。
 
 
知り過ぎている福永祐一にとって、エピファネイアの仔の強さこそ、求め続けていたものだった。
 
まさか、対抗馬の背でその強さを思い知らされるとは!
 
 
内を通って伸びてきたスピルバーグ・北村宏司!
 
天皇賞秋を制した実力を見せた。
 
だが、ジャスタウェイに迫るのが精一杯だった。
 
 
はるか遠かったエピファネイア。
 
 
世界レベルのジャスタウェイを、失望させたエピファネイアの底知れぬパワー。
 
 
前年、天皇賞秋でジェンティルドンナを失望させた4馬身差。
 
 
ジャスタウェイは、呆然と見るしかなかった、4馬身前にいるエピファネイアを。
 
 
レース後、スミヨンは興奮気味に語った。
 
『自分が乗せてもらった日本馬の中では、一番強い!』
 
 
1着エピファネイア
4馬身
2着ジャスタウェイ
半馬身
3着スピルバーグ
4分の3馬身
4着ジェンティルドンナ
クビ
5着ハープスター
 
 
レースを終えて、ジェンティルドンナ陣営は決定した。
 
いま一度、走ることを。
 
有馬記念、ラストランでリベンジを誓った。
 
 
(つづく)