3歳牝馬と古馬牝馬の対決、エリザベス女王杯。
牝馬の枠を超え、古馬王道を突き進むジェンティルドンナ。
ジェンティルドンナのいない『女王杯』なら勝たなくては・・・・・・燃えるのはヴィルシーナだ。
父ディープインパクト、母ハルーワスウィート。半弟シュヴァルグラン、全妹ヴィブロス。
3歳時、桜花賞・オークス・秋華賞・、すべてジェンティルドンナの2着。
ジェンティルドンナがジャパンカップに回り、不在となった前年エリザベス女王杯は、レインボーダリアの大駆けに合いクビ差の2着。
勝てない女王を払拭したのは5月、ヴィクトリアマイルだった。ホエールキャプチャの追撃を振り切り初のG1制覇。
その後、安田記念8着、秋は京都大賞典8着。
牡馬相手には苦戦も、牝馬同士の戦い。古馬の貫禄を見せねばならない、か。
勢いで勝負する3歳牝馬。
その筆頭はメイショウマンボだ。
父スズカマンボ、母メイショウモモカ。
決して高い評価はなかったが、『メイショウ』期待の血。
桜花賞10着も、9番人気でオークスを勝ち、秋華賞も制して『牝馬2冠』達成。
1997年デビュー。順調に勝利数を伸ばし、2000年秋華賞、ティコティコタックでG1初勝利した武幸四郎。
連続重賞勝利が途絶えた2009年ごろから不遇の年月を重ね、メイショウマンボとの出会いで5年ぶり重賞勝利、7年ぶりG1勝利を上げた。
武幸四郎にとっても掛け替えのない馬となったメイショウマンボ。
ともに、さらなる高みをめざす。
秋華賞、1番人気も4着に敗れたデニムアンドルビー。
父ディープインパクト、母ベネンシアドール。今年、皐月賞で『新星』として中もkされるキタノコマンドールは全弟だ。
栗東・角居勝彦厩舎の秘蔵っ仔。あふれる才能を爆発させるか!と思われた秋華賞は、直線、伸びあぐねてメイショウマンボを詰め切れなかった。
京都内回り、高低差の低い坂の下りで差を詰められなかった。
もしや、坂を下るのが下手なのでは・・・・・・、角居師の中によぎった不安。
エリザベス女王杯は外回り、高低差はよりきつくなる。
出走するからには、打ち消すしかなかった。
角居厩舎のディープインパクト産駒ラキシス。
同じノーザンファーム産、デニムアンドルビーに劣らず素質を秘めた牝馬。
5戦3勝。500万下、1000万下を連勝したばかりの新進気鋭だが、だが、厩舎の期待は高かった。
ディアデラマドレは、オークス3着、ヴィクトリアマイル3着、エリザベス女王杯3着、重賞3勝馬ディアデラノビアの2番仔。
13番人気、人気薄だがトーセンアルニカはメイショウサムソン産駒、半姉はアイムユアーズ。
桜花賞2着、オークス3着、秋華賞3着、ホエールキャプチャ。
3歳時に獲れなかったG1を、4歳時ヴィクトリアマイルで獲った。
5歳、ヴィクトリアマイルはヴィルシーナの2着。
8月・札幌記念は14着に敗れるも、10月・府中牝馬Sを4番人気で制し、健在ぶりを示した。
3歳時、条件馬で出走した秋華賞。ジェンティルドンナの0.2秒差3着だったアロマティコ。
大きな自信となった。
4歳となって、ヴィクトリアマイル10着。10月、府中牝馬Sは32秒4の上がりも、ホエールキャプチャの0.3秒差7着。
最大の武器は後方一気の切れ味。弱点は前に行けない不器用さ。
不器用さがあるからこそ切れるのか?言えることは、それだからこそアロマティコなのだ。
前年のエリザベス女王杯覇者レインボーダリア、桜花賞馬マルセリーナ、、これで限界ならラストラン。
11月10日、エリザベス女王杯。
1.オールザットジャズ
2.デイアデラマドレ
3.メイショウマンボ
4.ミッドサマーフェア
5.ホエールキャプチャ
6.ハナズゴール
7.アロマティコ
8.マルセリーナ
9.ヴィルシーナ
10.エディン
11.タガノイノセンス
12.セレブリティモデル
13.レインボーダリア
14.デニムアンドルビー
15.スピードリッパー
16.セキショウ
17.トーセンアルニカ
18.ラキシス
1番人気ヴィルシーナ、2番人気メイショウサムソン、3番人気デニムアンドルビー。
4番人気ホエールキャプチャ、5番人気アロマティコ。
馬場の真ん中からエディンが飛ばす。
外からはセキショウ、、ラキシス、セレブリティモデルも行く。
トーセンアルニカ、スピードリッパー。
雨降りしきる重馬場の京都競馬場。
外枠の馬がダッシュ良く前に行くなか、先行集団から3馬身以上離れた第2集団の先頭をメイショウマンボが行った。
その後ろがヴィルシーナ、ホエールキャプチャだ。
後方を行くレインボーダリア、アロマティコ。
後方2頭目ニマルセリーナ。
最後方から行くのは、デニムアンドルビーだ。
1000m通過62秒7、重馬場とはいえ、ややスローか?
3コーナー、坂の下りにかけて、メイショウマンボが動いた!
6番人気ラキシスがいい手応えで2番手に上がって行くのを見て、外に出したメイショウマンボ・武幸四郎が勝負に出た。
内にいるヴィルシーナ、馬群に押し込められた形だ。
早めに勝負だ!
4コーナーへ向けて、射程圏に取り付いたメイショウマンボ!
ヴィルシーナは内であえぎ、デニムアンドルビーは後方のまま、上がれずにいる。
直線に向いて、エディンに襲いかかるラキシス・川田将雅!
その外から、メイショウマンボが全力で迫ってきた!
トーセンアルニカが来るが、伸びはひと息。
ラキシス、メイショウマンボの一騎打ちか!
だが、束の間。
メイショウマンボの迫力が、ラキシスを上回った。
ようやく後方から追い上げてきたのはアロマティコ・三浦皇成だ!
一気に前を交わし、ラキシスに迫った!
その後方からは、やっと、やっと伸びてきたデニムアンドルビー・内田博幸!
4番手を粘るトーセンアルニカに迫るまでだった。
雨中の決戦、軽快なステップで躍動し切ったのは、G1・3冠目メイショウマンボだ!
ラキシスを振り切って、『女王』のゴール。
1着メイショウマンボ
2着ラキシス
3着アロマティコ
4着トーセンアルニカ
5着デニムアンドルビー
5着に敗れたデニムアンドルビーの角居師は確信した。
『まいったね。こんなに坂を下るのが下手だとは・・・・・・』
以降、デニムアンドルビーが京都を走ることはなくなった。
牝馬G1・エリザベス女王杯を狙うことができなくなったデニムアンドルビー。牡馬相手にG1を走り続けることとなる一因は、ここにあった。
(つづく)