古馬牝馬のマイルG1、ヴィクトリアマイル。

 

春、牝馬にとって大きな目標となるレースだ。

 

 

 

ぜひとも獲りたい一戦。狙うのはヴィルシーナだった。

 

父ディープインパクト、母ハルーワスウィート。半弟シュヴァルグラン、全妹ヴィブロス。

 

馬主は『大魔神』として知られた佐々木主浩氏。

 

 

同じディープインパクト産駒ジェンティルドンナの桜花賞・オークス・秋華賞2着馬。

 

強すぎるジェンティルドンナの同期という悲哀。

 

ジェンティルドンナのいないエリザベス女王杯で鬱憤を晴らすはずだったが、レインボーダリアの急襲に合い、またも2着。

 

 

究極のシルバー・コレクターとなってしまった。

 

古馬となって、3月・産経大阪杯はオルフェーヴル、ショウナンマイティ、エイシンフラッシュ、牡馬強豪には歯が立たず6着惨敗。

 

それでも牝馬同士の一戦なら、今度こそ『女王』の座を得なければ・・・・・・海外遠征、ドバイで戦ったジェンティルドンナにも申し訳ないッ。

 

 

 

ジェンティルドンナのいない牝馬の戦いなら・・・・・・意欲に燃えるのはヴィルシーナだけではない4歳牝馬たち。

 

 

チューリップ賞でジェンティルドンナを破ったハナズゴール。

 

父は高松宮記念を制した個性派オレハマッテルゼ。

 

3歳G1は、その末脚は不発だったが、古馬になって1月・京都牝馬Sを制し、4月・阪神牝馬Sはサウンドオブハートの4着。

 

ヴィクトリアマイル、後方一気を虎視眈々と狙う。

 

 

 

阪神ジュベナイルフィリーズ1番人気3着、桜花賞4着のサウンドオブハート。

 

桜花賞後、骨折で大事な8カ月を棒に振ったが、ターコイズS1着、京都金杯4着、洛陽S1着、阪神牝馬S1着。

 

9戦6勝、3着1回。忘れかけられた実力牝馬が、復活Ⅴを誓う。

 

 

 

『復活』の2文字なら、ブエナビスタの半妹ジョワドヴィーヴルもそうだ。

 

父がスペシャルウィークからディープインパクトに代わり、ブエナビスタを超える逸材か!といわれたジョワドヴィーヴル。

 

新馬勝ち即臨んだ阪神ジュベナイルフィリーズを、直線一気に突き抜けてド肝を抜いた。

 

桜花賞6着後、骨折発症。

 

2月復帰も京都記念7着、3月・中日新聞杯6着。

 

このままでは終われない。

 

 

 

桜花賞3着、オークス4着、秋華賞6着。牝馬クラシックを走り切ったアイムユアーズ。

 

阪神牝馬S2着で再び脚光を浴びるか?イチオクノホシ。

 

秋華賞3着。切れ味を見せるか?アロマティコ。

 

 

 

 

5歳以上の古馬とても黙ってはいられない。

 

 

ジェンティルドンナの全姉。前年のヴィクトリアマイル2着馬ドナウブルー5歳。

 

テレグノシス産駒。中山牝馬S1着、福島牝馬S2着と気を吐くマイネイサベル5歳。

 

エリザベス女王杯でヴィルシーナを競り落としたレインボーダリア6歳。

 

重賞4勝、7歳となってもG1を夢見るフミノイマージン。

 

 

阪神ジュベナイルフィリーズ2着、桜花賞2着、オークス3着、秋華賞3着、エリザベス女王杯4着、すぐ目の前にあったG1を獲れなかったホエールキャプチャ5歳。

 

前年、ヴィクトリアマイルを制し、やっとかなった念願。

 

燃え尽きたか?宝塚記念14着、府中牝馬S11着、エリザベス女王杯10着、クイーン賞(地方ダート)13着、阪神牝馬S14着。

 

わずか1年の様変わり。心まで、折れてしまったか?

 

 

 

5月12日、ヴィクトリアマイル。

 

1.マイネイサベル

2.オールザットジャズ

3.ジョワドヴィーヴル

4.ハナズゴール

5.ザッハトルテ

6.ドナウブルー

7.アドマイヤセプター

8.ホエールキャプチャ

9.アイムユアーズ

10.イチオクノホシ

11.ヴィルシーナ

12.ゴールデングローブ

13.レインボーダリア

14.アロマティコ

15.フミノイマージン

16.メーディア

17.サウンドオブハート

18.エーシンメンフィス

 

 

1番人気ヴィルシーナ、2番人気ハナズゴール、3番人気サウンドオブハート。

 

4番人気ジョワドヴィーヴル、5番人気マイネイサベル。

 

 

 

ゲートが開いて、真っ先に飛び出したのはヴィルシーナだ。

 

その内から出て行くアイムユアーズ。

 

ヴィルシーナが先頭を譲った。

 

3番手は外からはメーディア。

 

マイネイサベルが内から続いた。

 

 

サウンドオブハート、ドナウブルーが好位を取り、

 

中団でひしめくのはオールザットジャス、アドマイヤセプター、ザッハトルテ。

 

中団後ろにハナズゴール、イチオクノホシ。

 

 

後方にジョワドヴィーヴル、レインボーダリア、フミノイマージン。

 

最後方がアロマティコだ。

 

 

 

3ハロン、34秒6。平均ペース。

 

高速馬場、前は止まらない馬場。

 

 

2番手に下げたヴィルシーナ、鞍上・内田博幸は完全に手のうちに入れた。

 

流れるようにスムーズにレースは進み、直線に入った。

 

 

粘るアイムユアーズ。

 

外から並びかけるヴィルシーナ。

 

だが、

 

まだ抜け出さない!

 

 

内から、じっと溜めていたマイネイサベル・柴田大知が、

 

アイムユアーズの外に持ち出した!

 

 

勝負に出た!

 

 

横に大きく広がった後続。

 

大外、大きく外れたフミノイマージンが止まった。故障か!

 

 

大外から上がるのはイチオクノホシ、クリスチャン・デムーロだ!

 

だだが、坂で伸び脚が止まった。

 

その内から、満を持して伸びてきたのはホエールキャプチャ・蛯名正義だ!

 

 

12番人気まで下がったホエールキャプチャ。

 

中団馬群で、ひたすら時を待った。

 

心は・・・・・・折れていないッ。

 

 

鋭い脚が戻ったホエールキャプチャ!

 

一気に前を呑み込む脚。

 

 

待っていたのは、

 

ヴィルシーナだ!

 

 

勝負をかけ、抜け出したマイネイサベル!

 

 

追いかけず、待った。

 

きっと来る誰か。

 

勝つために待った。

 

 

伸びるホエールキャプチャに合わせたヴィルシーナ。

 

2頭で、マイネイサベルに襲いかかった!

 

 

後方から、エンジン全開させたジョワドヴィーヴル・川田将雅!

 

内馬群から抜け出してくるドナウブルー・C.ウイリアムズ!

 

 

一気に前と後ろが入り乱れるゴール前!

 

 

ゴール寸前、マイネイサベルをとらえたヴィルシーナ、ホエールキャプチャ!

 

全く並んだまま、ゴールを駆け抜けた!

 

 

栄冠は、

 

ヴィルシーナだ!

 

 

わずかハナ差、

 

大きな、大きなハナ差だった。

 

 

1着ヴィルシーナ

ハナ

2着ホエールキャプチャ

半馬身

3着マイネイサベル

半馬身

4着ジョワドヴィーヴル

半馬身

5着アイムユアーズ

 

 

4コーナーで大外に外れたフミノイマージンは、右第1指関節脱臼、発症。

 

予後不良、安楽死処分となった。

 

 

サウンドオブハートは直線ズリ下がり14着。左前浅屈腱不全断裂、発症。

 

競走能力喪失、ふるさとタイヘイ牧場へ帰った。

 

 

4着となったジョワドヴィーヴルは、その後、調教中に左後肢下腿骨開放骨折、発症。

 

予後不良、安楽死処分となった。

 

 

競走馬の光と影多きレースとなった第8回ヴィクトリアマイルだった。

 

 

(つづく)