春の高松宮記念を制し、史上初の連覇を飾ったキンシャサノキセキが引退。

 

新しい『スプリント王』を模索する時代となった。

 

 

秋のスプリントG1・スプリンターズS。

 

スプリント新時代を担おうとする馬たちが結集。

 

 

はたまた、日本のスプリント界を席巻すべく、シンガポール、香港から強力な刺客3頭がやってきた。

 

中でも最も注目されたのが、シンガポールのスピードスター、ロケットマンだ。

 

6歳セン馬、21戦17勝、2着4回。シンガポール・スプリント界に君臨し、ドバイゴールデンシャヒーン(G1)、クリスフライヤー国際スプリント(G1)を含む5連勝中。

 

2005年、『香港最強』として来日、1番人気でスプリンターズSを制覇したサイレントウィットネス。

 

まさに匹敵する強さ、といわれた。

 

 

 

4歳セン馬。若さで勝負するのが、香港馬ラッキーナイン。

 

後に日本で生まれる半弟がサドンストーム、ティーハーフだ。

 

4月、香港のチャンピオンズマイル(G1)2着。

 

9月、早めに来日、出走したセントウルSでは、エーシンヴァーゴウのアタマ差2着。

 

日本の芝に合うことを証明した。

 

 

8歳セン馬、やや衰えを見せるが、G1馬の底力を持つグリーンバーディーとともに、真剣度100%の香港馬の活躍を見せるか。

 

 

 

 

迎え撃つ日本馬。

 

3度目の正直、2度の屈辱を晴らすために・・・・・・ダッシャーゴーゴー。

 

 

前年、スプリンターズS、2位入線4着降着。

 

春、高松宮記念、4位入線11着降着。

 

斜行による進路妨害。ルール上、致し方ないことだが、それは人間が作ったルール。

 

馬にとっては、真剣に走った結果が降着。わけのわからぬ屈辱でしかなかった。

 

 

6月、CBC賞1着。9月、セントウルSはエーシンヴァーゴウの3着。

 

3度目のスプリントG1。ダッシャーゴーゴーにとっては、自分の走りとの戦いだったのか?

 

 

 

 

カレンチャン・・・・・・あまりにも可愛い、その響き。

 

競走馬カレンチャン号は、可愛さも、気弱さも捨て、野望を持った。

 

父クロフネ、母スプリングチケット。伯父に皐月賞2着馬タケミカヅキ。

 

半兄スプリングソングは重賞・京阪杯勝ち。高松宮記念9着、7着。G1には手は届かなかった。

 

 

娘さんの名を冠名『カレン』とする馬主・鈴木隆司氏。その秘蔵っ子のような馬名、カレンチャン。

 

期待の大きさの表れか?

 

 

デビューから2,1,1着。桜花賞をめざして出走したフィリーズレビューでは8着と敗退。

 

クラシックを諦めスプリントに路線を変更。本格化を迎えたのは、古馬となったこの年だった。

 

1月・伏見S(1600万下)3着のあと、2月・山城S(1600万下)1着、4月・阪神牝馬S(G2)1着、7月・函館スプリントS(G3)1着、8月・キーンランドS(G3)1着。

 

一気の4連勝、重賞3連勝。可憐な少女は走るたびに『大人の強さ』を身に着けた。

 

輝く瞳に宿ったのは、『スプリント女王』への野望の光だった。

 

 

 

 

デビューから短距離路線を行くサンカルロ。

 

3歳、NHKマイルカップ8位入線13着降着。マイルチャンピオンシップ12着。

 

4歳、高松宮記念4着、安田記念13着、スプリンターズS3着。

 

5歳になって、春、高松宮記念。キンシャサノキセキの2着。

 

一歩一歩、昇り詰めた階段。あと一歩。

 

 

後方一気の不器用な馬、サンカルロ。

 

昇るべき最後の階段は、ひと際高い。

 

高いがゆえに・・・・・・昇る価値あり。

 

 

 

 

朝日杯フューチュリティS、セイウンワンダーの2着フィフスペトル。

 

皐月賞7着、NHKマイルカップ5着、ダービー11着、マイルチャンピオンシップ8着。

 

歯が立たなかったG1戦線。

 

9月、京成杯オータムハンデを勝ち、再び輝きを取り戻したか!

 

 

 

 

4歳になって1,1,1,3,1着。アイビスサマーダッシュ、セントウルS、重賞2勝。

 

カレンチャンに負けない勢いを見せる4歳牝馬、エーシンヴァーゴウ。

 

 

 

祖母はローズS勝ち、エリザベス女王杯1番人気(9着)スターバレリーナ。

 

母はグランパドドゥ(男女2人で行うダンス)、3人で行われるパ・ド・トロワから付けられたのがパドトロワだ。

 

キーンランドカップをカレンチャンからクビ、ハナ差の3着。G1の大舞台、華麗に踊って見せるか?

 

 

 

10月2日、スプリンターズS。

 

1.ラッキーナイン

2.ケイアイアストン

3.パドトロワ

4.エーシンリジル

5.ロケットマン

6.サンカルロ

7.フィフスペトル

8.ダッシャーゴーゴー

9.ヘッドライナー

10.カレンチャン

11.トウカイミステリー

12.アーバニティ

13.ビービーガルダン    競走除外

14.エーシンヴァーゴウ

15.サンダルフォン

16.グリーンバーディー

 

 

1番人気ロケットマン、2番人気ダッシャーゴーゴー、3番人気カレンチャン。

 

4番人気ラッキーナイン、5番人気サンカルロ。

 

単勝1.5倍、圧倒的人気がロケットマンだった。

 

 

ゲート内でビービーガルダンが暴れ、枠入りのやり直し。ビービーガルダンは競走除外となり、2度目のゲート入り。

 

多くの馬に少なからず影響を及ぼし、波乱含みの中でゲートが開くのを待った15頭。

 

 

エーシンヴァーゴウが好スタートを切ったが、じんわり下げた。

 

ハナを切ったのはヘッドライナー、2番手内からパドトロワ、ほぼ並んだ。

 

 

3番手、強引に突っ込んで行った1番人気ロケットマン。

 

内からラッキーナイン、エーシンリジルが行き、外、好スタートから下げたエーシンヴァーゴウ。

 

その後ろから行くのがカレンチャン、フィフスペトルだ。

 

 

中団後ろにつけたダッシャーゴーゴー。

 

いつも通り後方から行くサンカルロ。

 

最後方、トウカイミステリー。

 

 

3ハロン・33秒0、ハイペースも高速馬場。

 

先行馬ペースか?

 

 

3番手でも、果敢に前を狙うロケットマン。

 

押して、押して、だが、前に出れない!

 

足枷をつけられたような動くの重さだ。

 

 

1番人気危うし!

 

 

4コーナー、

 

先頭に立ったのはパドトロワ!

 

 

外からいい気に2番手に上がるのは、エーシンヴァーゴウ!

 

内から接近するラッキーナイン!

 

ロケットマンも懸命に離されまいと、取り付く!

 

 

大外から、グングン上がってきたのは、カレンチャンだ!

 

 

直線、先頭を行くパドトロワ・安藤勝己!

 

並びかけたのはエーシンヴァーゴウ・福永祐一!

 

もう1頭、

 

外から並びかけた!

 

カレンチャンだ!

 

 

芦毛、グレーの馬体が大きく、大きく見えた。

 

力強い完歩。

 

 

可憐さは微塵もないフットワーク。

 

パドトロワ、エーシンヴァーゴウと繰り広げる叩き合い。

 

鞍上・池添謙一のムチが唸った!

 

 

3頭の後ろから、懸命に接近しようとする後続。

 

抜け出そうとするのは、ロケットマン!

 

 

押して、押して、押しっぱなしの中で、バテないッ。

 

前に喰らいつこうとする。

 

これが、世界か!

 

だが、追いつかない。

 

 

ゴール前、

 

力強いひと伸び!

 

 

抜け出したのは新生『女王』。

 

 

カレンチャン!

 

 

5連勝で一気に頂点に立った。

 

 

1着カレンチャン

1馬身4分の3

2着パドトロワ

ハナ

3着エーシンヴァーゴウ

半馬身

4着ロケットマン

クビ

5着ラッキーナイン

 

 

(つづく)