ドバイワールドカップでヴィクトワールピサが歴史的勝利を上げ、
トランセンドとともにワンツー・フィニッシュの快挙。
 
 
3月11日、東日本大震災。悲しみに暮れる日本にとって、わずかながらの明るい話題だった。
 
 
そして、翌27日、日本で行われたG1、高松宮記念。
 
 
 
前年の覇者、キンシャサノキセキが史上初の連覇を狙う。
 
前年、高松宮記念制覇後、スプリンターズS2着、マイルチャンピオンシップ13着、阪神カップ1着。
 
3月、前哨戦のオーシャンSは、59㌔を背負ってダッシャーゴーゴーの2着。
 
8歳となっても衰えない脚力。南半球、半年遅生まれのキンシャサノキセキ。
 
 
スプリンターズS連覇、高松宮記念・スプリンターズSの春秋・秋春連覇はいても、まだない高松宮記念連覇。
 
8歳馬による高松宮記念制覇も、まだない。
 
キンシャサ、奇跡への挑戦か?
 
 
 
 
 
人気ではキンシャサノキセキを上回る5歳ジョーカプチーノ、4歳ダッシャーゴーゴー。
 
若い力。
 
 
3歳時、NHKマイルカップを制したジョーカプチーノ。
 
ダービー18着後、脚部不安で走ることもできぬまま1年5カ月。
 
闇から復帰して、スワンS3着、マイルチャンピオンシップ9着。

本格的復活ぶりを見せたのは、3走目、ラピスラズリS(オープン)を逃げ切ってからだ。
 
1月、シルクロードSをまさかの後方一気、10番手から32秒6の上がりで差し切り勝ち。
 
逃げて良し、差して良し、万全で臨むジョーカプチーノ、完全復活宣言はG1奪取。
 
 
 
3歳でスプリンターズSに挑戦したダッシャーゴーゴー。
 
ウルトラファンタジーのハナ差、2位入線も進路妨害、4着降着となった。
 
悪夢を吹っ切れず、続く京阪杯は1番人気10着と大敗。
 
 
父はスプリンターズSを連覇した『短距離王』サクラバクシンオー。
 
4歳になって、3月、オーシャンSでキンシャサノキセキを破り、悪夢は悪夢は払拭した、か?
 
若い力で、突き進むのみ。
 
 
 
 
マイルチャンピオンシップ12着、高松宮記念4着、安田記念13着、スプリンターズS3着。
 
ようやくカタチが見えてきた5歳サンカルロ。
 
後方一気の切れ味が通用する・・・・・・自信に満ちた。
 
2月、阪急杯を差し切り勝ち。
 
もう、後退はないッ。
 
 
 
 
『史上最強の短距離外国産馬』タイキシャトルを父に持つレッドスパーダ。
 
先行力を武器に阪神カップ、キンシャサノキセキの2着。
 
オーシャンS、ダッシャーゴーゴー、キンシャサノキセキに次ぐ3着。
 
隙あらば・・・・・・と虎視眈々。
 
 
 
 
7歳となってもがんばるビービーガルダン。
スプリンターズS3着、2着。高松宮記念2着は伊達ではない。
 
 
半姉にスティンガーを持つ7歳アーバニティ。
シルクロードS、14番人気2着は、決してフロックなんかじじゃない。
 
 
人気は最低人気でも、短距離を51戦走り続けるウエスタンビーナス、8歳。
 
もう、逃げることもできなくなった。それでも、前へ、前へ、心が体を駆り立てる。
 
 
どの馬も、スプリントにかける思いは熱かった。
 
 
 
3月27日、高松宮記念。
 
1.レッドスパーダ
2.ショウナンアルバ
3.サンダルフォン
4.キンシャサノキセキ
5.ジョーカプチーノ
6.アーバニティ
7.スプリングソング
8.サンカルロ
9.ヘッドライナー
10.サマーウインド
11.シンボリグラン
12.ビービーガルダン
13.ダッシャーゴーゴー
14.エーシンフォワード
15.ワンカラット
16.ウエスタンビーナス
 
 
1番人気ジョーカプチーノ、2番人気ダッシャーゴーゴー、3番人気キンシャサノキセキ。
 
4番人気サンカルロ、5番人気レッドスパーダ。
 
 
 
ゲートが開いて先頭に立ったのはヘッドライナーだ。
 
内からレッドスパーダ、外からダッシャーゴーゴーが2番手に上がる。
 
 
ダッシャーゴーゴー、鞍上・川田将雅、積極策に出た!
 
 
キンシャサノキセキ、ジョーカプチーノも前だ。
 
大外枠、ワンカラット、ウエスタンビーナスも先行陣に取り付いた。
 
 
電撃戦、熾烈な争い。
 
馬群に挟まれたか?ジョーカプチーノが下がった。
 
 
ビービーガルダン10番人気、アーバニティ11番人気が中団。
 
その後ろから行くサンカルロ。有力勢でただ1頭、末脚に賭けるッ。
 
 
最後方から行くのは、8歳サンダルフォンだ。
 
 
 
突然、
 
馬群からズルズルと下がり始めた!
 
ウエスタンビーナスだ。
 
 
懸命に大外枠から前に取り付いた、16番人気、8歳牝馬。
 
 
『本当によくがんばってきてくれた。パドックでビーナスの姿を見ながら、繁殖について鈴木調教師と語り合っていたところでした。どんな仔を産んでくれるのか』
 
馬主・西川賢氏が語るウエスタンビーナス。
 
第二の馬生、母となる日は近かった。
 
 
運命は残酷だ。
 
 
逃げて、逃げて、戦い続けたウエスタンビーナス。
 
逃げれなくなっても、気持ちは前へ、前へ・・・・・・、脚が潰れた。
 
 
ズルズルと下がり、馬群から取り残されたウエスタンビーナス。
 
競走中止、右前第1指骨粉砕骨折発症、予後不良。安楽死処分。
 
 
母となる日は、来なかった。
 
 
 
熾烈な争いの中で、ウエスタンビーナスの離脱は逃げるヘッドライナーにも、ダッシャーゴーゴーにもキンシャサノキセキにも、誰にもわからなかった。
 
わからないままにレースは続いた。
 
 
直線を迎え、
 
先頭に躍り出たのはダッシャーゴーゴーとキンシャサノキセキだった。
 
 
先行馬群から、挟まれたように下がったジョーカプチーノは復活を見せず、馬群の中であえいだ。
 
粘るレッドスパーダとらえ、前を見るビービーガルダン、アーバニティ!
 
 
外から一気の末脚を見せたのは、サンカルロだ!
 
 
 
若い力ダッシャーゴーゴー。
 
負けてはいられない、8歳キンシャサノキセキ。
 
 
誰もいない連覇、誰もいない8歳の『栄冠』。
 
ならば・・・・・・。
 
 
最後の最後、加速したのはキンシャサノキセキだった。
 
 
サンカルロ、アーバニティ、ダッシャーゴーゴー、ビービーガルダン、ほぼ並んでゴールした時。
 
 
キンシャサノキセキは、『スプリント王』への大歓声に包まれていた。
 
 
1着キンシャサノキセキ
1馬身4分の1
2着サンカルロ
アタマ
3着アーバニティ
アタマ+クビ
4着ビービーガルダン
1馬身半
5着レッドスパーダ
 
 
4位入線したダッシャーゴーゴーは、内側に斜行しジョーカプチーノの進路を妨害したとして11着降着となった。
 
 
(つづく)