秋華賞がアパパネの『牝馬3冠』達成に終わり、クラシック第3弾・菊花賞を迎える。
 
ダービーで集結した『黄金世代』は、それぞれの事情で歩む道は大きく分かれた。
 
 
ダービー前日に骨折、休養中のままはNHKマイルカップを日本レコードで勝ったダノンシャンティ。
 
ダービー後、休養に入り復帰の姿を見せないルーラーシップ。
 
菊花賞トライアルでローズキングダムのクビ差2着となったダービー馬エイシンフラッシュは、筋肉痛を発症、菊花賞出馬投票当日に回避となった。
 
 
戦列ををはなれた3頭。
 
 
皐月賞馬ヴィクトワールピサは凱旋門賞出走、7着に敗れ、帰国戦はジャパンカップと見られる。
 
トゥザグローリーはマイルチャンピオンシップへ。G1獲りをマイルで狙った。
 
ダービーを出遅れ、6着となったペルーサは天皇賞秋。古馬との対戦を選んだ。
 
 
 
『黄金世代』を代表する8頭、菊花賞へ出走してきたのはローズキングダム、ヒルノダムール、2頭だけとなった。
 
 
 
朝日杯フューチュリティSを制覇。『薔薇一族』の悲願を達成したローズキングダム。
 
さらなる目標は『王国』を築くこと、だった。
 
 
皐月賞4着、ダービー2着。
 
この世代で『王国』を築くのは至難の業だった、か?
 
 
だが、諦めるわけにはいかないローズキングダム。
 
9月、菊花賞トライアル・神戸新聞杯で、ダービー馬エイシンフラッシュにクビ差勝ち。
 
自信に満ち溢れ、『菊獲り』に出た。
 
 
 
 
皐月賞2着。地味な存在だったが、秘めた力を見せたヒルノダムール。
 
ダービーは9着と敗れ、夏、札幌記念は古馬と対戦し4着だった。
 
 
父マンハッタンカフェ、母父ラムタラ。サンデーサイレンスの血に、欧州の名馬ラムタラ、重厚な血統が合わされたヒルノダムール。
 
潜在された血の本格化は、まだだったのか?
 
 
 
 
『黄金世代』、有力な一員となるために・・・・・・活発な活躍を見せる馬たち。
 
 
1000万下、オープン、オープン、3連勝で臨むトウカイメロディ。
 
 
8戦3勝、2着4回、セントライト記念の覇者クォークスター。
 
 
 
母レーヴドスカーを祖とする『夢一族』のレーヴドリアン(東洋の夢)。
 
レーヴドスカーの『レーヴ』(夢)の名をつぐ仔たちには、運命に弄ばれるように、悲運な馬が相次いだ。
 
レーヴダムール(愛の夢)は2戦1勝、阪神ジュベナイルフィリーズ2着。2008年12月19日死亡。
 
アプレザンレーヴ(夢のあとで)は7戦3勝、青葉賞制覇、ダービー5着。浅屈腱炎発症、菊花賞前、2009年10月8日に登録抹消。
 
そして、レーヴドリアン。皐月賞9着、ダービー11着、活躍の場はまだないが、『夢一族』の夢となった『走り抜く』ことに邁進していた。
 
大きな夢じゃない。小さな、小さな、当たり前の夢。競走馬として、無事に馬生を走り抜くこと。それは、母レーヴドスカーの願いでもあった。
 
競走馬として、第一線レース『クラシック』を走り抜くべく菊花賞に挑戦するレーヴドリアン。輝きの瞳があった。
 
 
 
曾祖母タニノヒュールパス、祖母タニノブーケ、母タニノジャドール。
 
『タニノ』の古き良き血を受け継ぐビッグウィーク。
 
かつては、タニノハローモア(皐月賞)、タニノムーティエ(皐月賞・ダービー『2冠』)、タニノチカラ(天皇賞・有馬記念)。近年にはタニノギムレット(ダービー)、ウオッカ(G1・7冠)を送り出したカントリー牧場産。
 
父に凱旋門賞馬バゴの血を受け期待されたが、8,2,2,2,1着。未勝利脱出に5戦を要した。
 
500万下、1000万下を勝ち、未勝利戦から3連勝。神戸新聞杯でローズキングダムの3着。辛うじて菊花賞出走を決めた。
 
カントリー牧場にとっては、忘れ得ぬ『菊花賞』。
 
ビッグウィークには知り得ぬ因縁ではあったが、なぜか、血は騒いだ。
 
 
 
 
10月24日、菊花賞。
 
1.ヒルノダムール
2.レーヴドリアン
3.クォークスター
4.ネオヴァンドーム
5.シルクアーネスト
6.ビッグウィーク
7.ミキノバンジョー
8.トレイルブレイザー
9.シルクオールディ
10.ローズキングダム
11.リリエンタール
12.ビートブラック
13.ゲシュタルト
14.コスモラピュタ
15.トウカイメロディ
16.カミダノミ
17.アロマカフェ
18.サンディエゴシチー
 
 
1番人気ローズキングダム、2番人気トウカイメロディ、3番人気ヒルノダムール。
 
4番人気クォークスター、5番人気レーヴドリアン。
 
 
 
小雨降る良馬場。
 
好スタートを切ったのはビッグウィークだったが、
 
外から先頭を奪ったのはコスモラピュタだった。
 
 
カミダノミが2番手に上がって、3Bン手に控えたビッグウィーク。
 
ビートブラックが続き、レーヴドリアンがいつもより前め、5番手内につけた。
 
 
中団を行くヒルノダムール、トウカイメロディ。
 
ローズキングダムは後方、13番手。
 
 
単勝2.1倍、圧倒的1番人気。鞍上は神戸新聞杯から手綱を取る武豊。
 
余裕の後方追走か?
 
 
後方2頭目にはクォークスターがつけ、
 
最後方につけたのはサンディエゴシチーだ。
 
 
 
快調に飛ばす先行陣。
 
正面スタンド前ではコスモラピュタ、5馬身差でカミダノミ、3馬身差でビッグウィーク。
 
さらに3馬身離れてビートブラックを先頭とする馬群が続いた。
 
 
1000m通過、61秒0。
 
平均ペースだが、後続を徐々に引き離す先行陣に、場内からざわめきが漏れ始めた。
 
 
ざわめきが大きくなった向こう正面。
 
コスモラピュタが10馬身以上引き離し、大逃げとなった。
 
 
まだ、後方のままのローズキングダム。
 
中団から、ヒルノダムール、トウカイメロディも動かないッ。
 
 
 
11番人気コスモラピュタとの差を、一気に詰めた7番人気ビッグウィーク、13番人気ビートブラック!
 
 
人気薄、伏兵馬たちがレースを引っ張る。
 
 
4コーナー、ようやく中団まで押し上げたローズキングダム!
 
まだ、前との差は、たっぷりあった。
 
 
中団で、伸びないヒルノダムール、トウカイメロディ!
 
 
直線、粘る、粘るコスモラピュタを猛追するのは、
 
ビッグウィーク・川田将雅だ!
 
ビートブラック・幸英明だ!
 
 
内から馬群をかき分けたレーヴドリアン・福永祐一!
 
大外から、やっと来たローズキングダム!
 
 
懸命に伸びたッ!
 
 
『薔薇一族の王国』を築く! 負けているわけには、いかないッ。
 
 
レーヴドリアンよりも鋭く伸び、コスモラピュタを、ビートブラックを、一気に交わし去った。
 
だが、
 
前にいた。
 
 
ビッグウィークには届かなかった。
 
 
 
カントリー牧場の大先輩。
 
タニノムーティエが喘鳴症、病を押して臨んだ菊花賞。
 
 
いにしえを知らないビッグウィーク。
 
だが、『タニノ』ゆかりの血ビッグウィークには、体の芯を突き抜ける何かがあった。
 
 
ローズキングダムの追撃を振り切り、
 
いい気にゴールを駆け抜けた。
 
 
1着ビッグウィーク
1馬身4分の1
2着ローズキングダム
クビ
3着ビートブラック
4分の3馬身
4着レーヴドリアン
クビ
5着コスモラピュタ
 
 
4着に入ったレーヴドリアンは、皐月賞・ダービー・菊花賞、クラシック3冠を走り抜き、『夢一族』の夢を果たした。
 
さらに、古馬となって新たな夢、G1制覇へ希望が見えたレースだった。
 
 
だが、
 
レース後日、腸ねん転を引き起こし、11月11日に死亡。
 
新たな夢は、消えた。
 
 
(つづく)