秋、10月3日。

 

日本ではスプリンターズSが行われる日。

 

 

海外、フランスでは凱旋門賞がスタートする。

 

日本からはヴィクトワールピサ、ナカヤマフェスタが参戦。

 

 

日本馬にとって、いつしか『悲願』となった凱旋門賞制覇。

 

 

その歴史は1969年、スピードシンボリの初挑戦より始まる。

 

生涯43戦17勝、天皇賞(春)、有馬記念2勝。

 

『皇帝』シンボリルドルフの母父。

 

野平省三厩舎。『ミスター競馬』といわれた野平祐二騎乗で挑戦したが、着外(11着以降は着順が発表されなかった)に終わった。

 

 

 

1972年、メジロムサシ。

 

生涯34戦10勝、天皇賞(春)。同期は皐月賞・ダービー『2冠馬』タニノムーティエ。

 

大久保末吉厩舎。野平祐二騎乗で着外(18着)。

 

 

 

1986年、シリウスシンボリ。

 

生涯24戦4勝、ダービー。

 

二本柳俊夫厩舎。二本柳厩舎と『シンボリ』の総帥・和田共弘氏の確執により、2年間、ヨーロッパを転戦させられ(14戦0勝)、その間出走した凱旋門賞は着外(14着)だった。

 

 

 

1999年、エルコンドルパサー。外国産馬。

 

生涯11戦8勝、NHKマイルカップ、ジャパンカップ、(海外)サンクルー大賞典。

 

二宮敬宇きゅう舎。蛯名正義騎乗で、モンジューの半馬身差、2着。

 

日本調教馬として、世界に名を轟かせた。

 

 

 

2002年、マンハッタンカフェ。

 

生涯12戦6勝、菊花賞、有馬記念、天皇賞春。

 

小島太厩舎。蛯名正義騎乗で着外(13着)。

 

 

 

2004年、タップダンスシチー。

 

生涯42戦12勝、ジャパンカップ、宝塚記念。

 

佐々木晶三厩舎。佐藤哲三騎乗で着外(17着)。

 

 

 

2006年、ディープインパクト。

 

生涯14戦12勝、皐月賞、ダービー、菊花賞、天皇賞春、宝塚記念、ジャパンカップ、有馬記念。

 

池江泰郎厩舎。武豊騎乗で3位入線も、ドーピング失格。

 

 

 

2008年、メイショウサムソン。

 

生涯26戦9勝、皐月賞、ダービー、天皇賞春、天皇賞秋。

 

高橋成忠厩舎。武豊騎乗で10着。

 

 

 

ジャパンカップでは世界を制するようになった日本馬。

 

もう、世界との実力差はない。

 

それは、あくまでジャパンカップにおいて・・・・・・であった。

 

 

エルコンドルパサーの快挙、それでも2着。

 

 

ディープインパクトなら・・・・・・日本中の期待を背負って3位入線。しかも、ドーピング失格の屈辱。

 

 

 

果てしなく遠く感じさせた凱旋門賞、栄光への悲願。

 

 

7戦5勝、皐月賞馬ヴィクトワールピサ、角居勝彦厩舎・武豊騎手。

 

10戦5勝、宝塚記念を制したナカヤマフェスタ、二宮敬宇厩舎・蛯名正義騎手。

 

日本から参戦した2頭。

 

 

ヴィクトワールピサはニエル賞4着を叩いて、ナカヤマフェスタはフォワ賞2着から、それぞれに前哨戦を無事に走り切り臨んだ凱旋門賞。

 

 

宝塚記念を勝つことがなければ、おそらく凱旋門賞の挑戦などあり得なかっただろうナカヤマフェスタ。

 

日本の期待の多くはヴィクトワールピサに注がれた。

 

 

ヴィクトワールピサが4着と負けたニエル賞勝ちのベカバッド。

 

G12勝を含む4連勝で臨むフェイムアンドグローリー。

 

イギリス・ダービー馬ワークフォース。

 

 

世界の強豪の中にあって、ともに単勝20倍台、伏兵でしかなかった2頭。

 

世界の評価は、わずかでもヴィクトワールピサよりナカヤマフェスタの方が高かった。前哨戦の結果の表れか?

 

 

 

20頭立てのレース。

 

スタートして全馬一団。

 

中団内側につけたのがヴィクトワールピサ。

 

同じ中団の外につけたのがナカヤマフェスタだ。

 

 

重馬場。

 

 

ヴィクトワールピサも、ナカヤマフェスタも主に実績はあり、不安はない。

 

ただ、草深い欧州の重馬場。

 

ハンパない重に、どう対応するのか?

 

 

 

外からジリジリと馬順を上げていくのはナカヤマフェスタ。

 

ヴィクトワールピサは、ひたすら直線にかけ、内で待った。

 

 

ナカヤマフェスタ鞍上は、エルコンドルパサーで凱旋門賞2着の蛯名正義。

 

厩舎は、これまたエルコンドルパサーを送り出した二宮敬宇厩舎。

 

 

チーム『エルコンドルパサー』が再びタッグを組んだ。

 

 

甦れッ!エルコンドルパサー。

 

 

徐々に番手を上げ、最終コーナーでは5番手の外につけたナカヤマフェスタ。

 

 

直線、各馬が大きく横に広がったなかを、

 

内から、懸命に馬群の間を突くヴィクトワールピサ。

 

長い直線、しぶとく前に迫る!

 

 

だが、世界の猛者は簡単には抜かせてくれない!

 

 

 

外から好位置まで上がったナカヤマフェスタ。

 

直線も、その脚は衰えない!

 

 

いや、衰えないどころか、さらに鋭く伸びた。

 

 

1頭、1頭、交わし、気がつけば先頭。

 

目の前に移るのは、雨に濡れた緑のターフだけだった。

 

 

一瞬、胸が躍った。

 

 

束の間、だった。

 

 

内から伸びてきた!

 

イギリスダービー馬ワークフォース。

 

 

並ばれた!

 

わずかに、前に出られたッ!

 

 

ナカヤマフェスタは懸命に走った。

 

もう、頭の中は何も考えられない。

 

 

ただ、走った。

 

競走馬としての、執念。

 

 

離されなかった。だが、詰めることもできなかった。

 

 

ワークフォース、ナカヤマフェスタ、2頭のデッドヒート。

 

3着馬サラフィナは2馬身半後方。

 

 

アタマ差、

 

それ以上でも、それ以内でもない。

 

 

わずかな差は均衡を保ったまま、2頭はゴールした。

 

 

世界に讃えられた2着、ナカヤマフェスタ。

 

 

だが、日本馬・日本調教馬の悲願は残されたまま。

 

 

 

最後、詰めたヴィクトワールピサは7着だった。

 

世界の厚い壁を突き破れなかった2頭。

 

 

より強くなった『凱旋門賞制覇』への思い。

 

 

オルフェーヴルへ、キズナへ・・・・・・、後に続く馬たちへ、思いは受け継がれていったことは、間違いない。

 

 

(つづく)