高速馬場、スピード優先の時代になっても、春の古馬最高峰レースといえば天皇賞春。
 
ディープインパクトが有馬記念を最後に引退。菊花賞馬ソングオブウインドは12月、香港ヴァースに出走4着後、右前浅屈腱炎発症が判明、引退。
 
菊花賞2着、ジャパンカップ2着、有馬記念4着、3200m天皇賞春で期待されたドリームパスポートは、阪神大賞典でアイポッパーの2着後、第3中手骨骨折。休養に入った。
 
 
混戦となった天皇賞春。
 
 
最有力とされたのは、7歳馬アイポッパーだ。
 
父はサッカーボーイ。自身はマイルのスーパースターといえたが、菊花賞馬ナリタトップロード、菊花賞・天皇賞春・宝塚記念を制したヒシミラクルを出し、産駒は長距離で注目された。
 
そのためか、デビュー・ダート3戦後は芝2400m・2500m中心に中・長距離を走り続けたアイポッパー。
 
最も充実した5歳、2005年。天皇賞春に挑戦した時は13番人気スズカマンボ、14番人気ビッグゴールドの大駆けにあい、惜しくも3着だった。
 
2006年、天皇賞春4着、宝塚記念13着、惨敗を繰り返す重賞、低迷した6歳。
 
6歳暮れになって、ようやくステイヤーズS勝利、7歳になって阪神大賞典でドリームパスポートを破り重賞連勝。
 
7歳にして、再び充実を見せるアイポッパー。

体質が弱くデビューは3歳6月とクラシックには間に合わずも、上昇志向で積み上げてきた実績。
 
低迷期を乗り越え、7歳になっても上を見る。G1未勝利のアイポッパーには、つねに見上げなければならない必然があった。
 
種牡馬の条件、G1の『冠』奪取。
 
ここで満足は許されなかった。
 
 
 
 
皐月賞・ダービーを勝って『3冠馬』挑戦。
 
700万円の馬、メイショウサムソンには夢のような現実だったのか?
 
 
菊花賞4着、ジャパンカップ6着、有馬記念5着。
 
皐月賞・ダービー『2冠馬』の強さが薄れた。
 
 
父オペラハウス、母は10戦未勝利のマイヴィヴィアン。母父ダンシングブレーヴ。
 
欧州のパワータイプ、重厚さの残る血統。
 
囁やかれだした。『高速馬場、スピード決着にはメイショウサムソンは対応できない』、『元々が2冠馬の器じゃないのかも』とまで・・・・・・。
 
 
4月、復帰戦、産経大阪杯。シャドウゲイトの逃げを半馬身とらえて勝利。勝ちタイム、2分1秒4、賞賛とまではいかなかった。
 
復権の場、天皇賞春。『2冠馬』として、世代№1の実績が本物であることを、見せなければ・・・・・・。
 
高速馬場であろうと、なんであろうと、強い馬は勝たねばならないッ。
 
メイショウサムソンにのしかかる重圧。
 
 
 
メイショウサムソンだけではない、古馬の強豪に立ち向かう明け4歳。
 
 
アメリカジョッキークラブカップを制し、日経賞3着。サンデーサイレンス・ラストクロップのマツリダゴッホ。
 
準オープン、オープンを連勝し、3連勝で日経賞を制したネヴァブション。
 
条件の身で日経新春杯を3着後、条件特別を連勝、オープンへ駆け上がったダークメッセージ。
 
ダイヤモンドS、6番人気でトウカイトリックの2着した条件馬、エリモエクスパイア。
 
 
若さ、勢いあるチャレンジャー。波乱を呼ぶか?
 
 
 
 
2004年、菊花賞馬デルタブルース6歳。
 
古馬となって、それ以上の活躍を見せれぬままに5歳秋、オーストラリアで復活した。
 
海外遠征、豪G1を連戦。コーフィールドカップ3着、メルボルンカップ優勝。
 
メルボルンカップでは、その後有馬記念でディープインパクトの2着するポップロックとワンツー、日本馬の快挙の軸となった。
 
帰国後の有馬記念6着。この年始動戦の阪神大賞典4着と、相変わらず波のある走りも、秘めた力はG1馬の破壊力。
 
国内で、菊花賞を勝った京都の地で、いま見せたい・・・・・・。
 
 
 
 
2002年7月、種牡馬としてわずか3年、7歳で世を去ったエルコンドルパサー。
 
ソングオブウインドが菊花賞制覇。ヴァーミリアンが芝重賞を勝ち、ダートに転向、地方G1川崎記念を制し活躍を始めた。
 
2頭に続け、と長距離界のてっぺんをめざすのはトウカイトリックだ。
 
頭角を現した前年、4歳時。阪神大賞典でディープインパクトの2着。天皇賞春出走も9着。
 
4歳暮れのステイヤーズS2着から、5歳になり万葉S2着、ダイヤモンドS初重賞制覇、阪神大賞典3着。
 
3000m以上の長距離戦で結果を出し続け、天皇賞春、混戦を絶つべく、虎視眈々。
 
 
5歳トウカイトリック。
 
2012年・ステイヤーズSを制し、2013年・ステイヤーズSに3着。2014年1月に万葉S(4着)に出走したトウカイトリックと同一馬とは、誰が信じるだろうか?
 
 
 
 
4月29日、天皇賞春。
 
1.マツリダゴッホ
2.ファストタテヤマ
3.ユメノシルシ
4.アドマイヤモナーク
5.アドマイヤタイトル
6.メイショウサムソン
7.トウカイエリート
8.アイポッパー
9.ウイングランツ
10.トウショウナイト
11.マイソールサウンド
12.トウカイトリック
13.ダークメッセージ
14.ネヴァブション
15.デルタブルース
16.エリモエクスパイア
 
 
1番人気アイポッパー、2番人気メイショウサムソン、3番人気デルタブルース。
 
4番人気トウカイトリック、5番人気マツリダゴッホ。
 
 
 
全馬ゲートイン直後、トウカイトリックの池添謙一がゲート内で馬から落ちてしまった。
 
トウカイトリックのゲート内硬直によるものだった。
 
幸い、トウカイトリックに異常はなく、再び騎乗した池添謙一はトウカイトリックとともにゲートイン。
 
 
待たされた馬たち、どのような影響があったか?
 
わからぬままにスタート。
 
 
波乱の予感の中で切られたスタート。
 
先頭に躍り出たのはユメノシルシだ。
 
 
ゴールで先頭に立つことが、全馬の夢のしるし。
 
 
ユメノシルシを追って、マイソールサウンド、マツリダゴッホが行った。
 
その後ろをトウショウナイト、デルタブルース。
 
 
先団を見ながら行くトウカイトリック。
 
エリモエクスパイアが続き、メイショウサムソンが中団につけた。
 
 
1000m、60秒3。
 
天皇賞3200mでは早く見えるが、高速馬場、平均ペースか?
 
 
メイショウサムソン、どう対応するのか?
 
 
相対する1番人気アイポッパーは、後方グループにいた。
 
 
メイショウサムソン、石橋守。
 
アイポッパー、安藤勝己。
 
 
高速馬場を、どこで仕掛けるか!
 
 
流れるように進むユメノシルシのペース。
 
 
3コーナーで馬群がひと塊となり、
 
真っ先に動いたのはデルタブルース・岩田康誠だ!
 
 
一気に前を交わし、先頭に立った。
 
 
すかさず動いた!
 
トウショウナイトだ、メイショウサムソンだッ!
 
 
アドマイヤタイトル・四位洋文、エリモエクスパイア・福永祐一も動いた。
 
 
一気に変わった流れ。
 
 
最後方まで下がり、中団までアイポッパーが押し上げた4コーナー。
 
 
デルタブルースを交わし、
 
メイショウサムソンが先頭に立った。
 
 
切れ味で勝負できない。ならば、
 
早めに立って押し切ってやるッ。
 
 
鞍上・石橋守、天皇賞は勝たなくては意味がない・・・・・・。
 
決死の覚悟で、先頭に立った。
 
 
 
直線、メイショウサムソンを巡って、
 
外から迫るのは、11番人気エリモエクスパイアだ。
 
 
3400mダイヤモンドSで見せた長距離の伸び脚。
 
いま、ここで再現だ!
 
鞍上・福永祐一が懸命に追った!
 
 
 
内から伸びてきたのは、
 
池添謙一が、内々で溜めた力を爆発させたトウカイトリックだ!
 
 
ゲートインのアクシデントなど、気にするやわな馬じゃない。
 
トウカイトリック、見せてやれ!お前の力。
 
 
メイショウサムソンか!エリモエクスパイアか!
 
離れた内から伸びる、トウカイトリックか!
 
 
3頭の死闘。
 
 
大外から飛んできた!
 
この一戦に賭けた7歳馬、アイポッパー!
 
 
いまとなっては、やや仕掛け遅れ、か?
 
 
猛然と3頭に迫ったが、
 
 
追いつく寸前に、
 
メイショウサムソンが、
 
エリモエクスパイアが、
 
トウカイトリックが、
 
 
ゴールへ雪崩れ込んだ。
 
 
3分14秒1、ディープインパクトには及ばないが、史上2番目の速いタイムの決着。
 
 
高速馬場を制したのは、ハナの差、
 
『2冠馬』メイショウサムソンだった。
 
 
1着メイショウサムソン
ハナ
2着エリモエクスパイア
クビ
3着トウカイトリック
半馬身
4着アイポッパー
1馬身4分の1
5着トウショウナイト
 
 
(つづく)