7戦7勝、シンボリルドルフ以来の無敗の『3冠馬』となったディープインパクト。
 
古馬との初対戦に選んだのは、有馬記念だった。
 
ファン投票第1位、160,297票。2位ゼンノロブロイを35,000票あまり上回った。
 
当然ながら、ファンが最も出てほしい馬ディープインパクト。
 
 
誰もが認める世代最強馬。古馬をも撃破する・・・・・・当然の結果として見られていた。
 
 
 
 
 
ディープインパクトに相対する古馬陣。
 
有馬記念をラストランとする実績馬が2頭いた。
 
 
前年、天皇賞秋・ジャパンカップ・有馬記念を制したゼンノロブロイ。
 
覚悟を決めて臨んだジャパンカップで3着。またもや、勝てずに終わった。
 
G1、3,2,2,3着。王者であるが故のもどかしさを残して、ゼンノロブロイはラストランを迎えることとなった。
 
 
 
6歳秋にジャパンカップを制したタップダンスシチー。大器晩成。
 
宝塚記念を制覇し、有馬記念2着だった7歳。
 
8歳という年齢には勝てなかった、か。
 
 
ジャパンカップではハイペースで逃げた、1000m通過58秒3。
 
直線半ばまで逃げたが、失速10着。
 
2分22秒1、世界レコードの決着。タップダンスシチーの逃げはムダではなかった。
 
それでも、8歳、自分の年齢に負けたタップダンスシチー。虚しさは拭えない。
 
 
ラストラン、も一度挑戦するか? 年齢との闘い。
 
負けても、負けても耐え続けた男。失うものはない!
 
 
 
 
8番人気で菊花賞を勝った、ダンスインザダーク産駒デルタブルース。
 
ジャパンカップ3着、有馬記念5着のあと、長い休養に入った。
 
11カ月、長すぎた休養。
 
11月、アルゼンチン共和国杯で復帰も5着。12月、ステイヤーズSを勝ち、有馬記念へ出走。
 
2002年シンボリクリスエス、2003年シンボリクリスエス、2004年ゼンノロブロイ、騎手として3連覇中のオリビエ・ペリエが鞍上。
 
優勝請負人を背に、打破するか?ディープインパクト。
 
 
 
 
たとえ相手がデープインパクトであろうと、勝つしかないッ。
 
燃えるのはハーツクライだ。
 
 
宝塚記念、スイープトウショウのクビ差2着。つかみかけたG1勝利。
 
ジャパンカップ、2分22秒1、世界レコードで走り抜けた。今度こそつかんだ・・・・・・写真判定で、ハナ差負けた。
 
 
勝つことの難しさ。今度の相手は、勝つことしか知らないディープインパクト。
 
負けを覚悟で走るつもりはない。
 
いつもいつでも、『勝つ気』だけは誰にも負けない。
 
それが、ハーツクライ。
 
 
 
 
ハーツクライの『魂の叫び』、負けず劣らずのG1制覇に野望を抱く。
 
G1惨敗、好走を繰り返すリンカーンだ。
 
ジャパンカップはゴール前差し込んだが、ゼンノロブロイにハナ差の4着。
 
 
同期ゼンノロブロイがラストラン。
 
消えゆく同期・・・・・・感慨など、ひたる余裕はない。
 
もう5歳暮れを迎えるリンカーン。1走、1走が真剣勝負だッ。
 
 
 
 
12月25日、有馬記念。
 
1.マイソールサウンド
2.サンライズペガサス
3.ゼンノロブロイ
4.コスモバルグ
5.スズカマンボ
6.ディープインパクト
7.ヘヴンリーロマンス
8.グラスボンバー
9.タップダンスシチー
10.ハーツクライ
11.オペラシチー
12.ビッグゴールド
13.コイントス
14.リンカーン
15.デルタブルース
16.オースミハルカ
 
 
1番人気デープインパクト、2番人気ゼンノロブロイ、3番人気デルタブルース。
 
4番人気ハーツクライ、5番人気タップダンスシチー。
 
 
オースミハルカが一番に飛び出すも、
 
内から行って先頭に立ったのはタップダンスシチーだ。
 
 
オースミハルカが2番手に下げ、3番手に上がってきたのが、ナント、
 
ハーツクライだ!
 
 
いつも後方、切れ味自慢のハーツクライ。
 
鞍上・ルメールの驚きの作戦は、先行策。
 
 
コスモバルク、オペラシチー、マイソールサウンドが続き、
 
その後にリンカーンがつけた。
 
 
ゼンノロブロイが中団。
 
 
最後方スタートのディープインパクト。
 
武豊はトリッキーな中山を意識したか、正面スタンドでは外を通り後方5頭目まで上がってきていた。
 
 
 
ジャパンカップほどのハイペースでは飛ばさないタップダンスシチー。
 
平均ペース、コスモバルクが3番手に上がった程度で、隊列の変わらない流れ。
 
 
3,4コーナー、ディープインパクトが外から早めのスパート。
 
直線6番手、大外を回った。
 
 
直線、力尽きたタップダンスシチー。
 
8歳、やはり、年齢には勝てなかったか!
 
 
抜け出したコスモバルク。
 
地方所属馬の『星』、秘かに狙っていたG1タイトル。
 
 
追ったのは、ハーツクライだ!
 
ディープが来る前に・・・・・・ルメールが叩きだしたッ。
 
 
コスモバルクとハーツクライの間を突いたのは、
 
リンカーン。
 
 
横山典弘が、馬群に潜み、ひたすら待った勝負時。
 
コスモバルク、ハーツクライに襲いかかった。
 
 
 
内3頭が壮絶な先頭争い。
 
外、飛んで来ると思われたディープインパクト。
 
 
『飛ばなかった』
 
 
負けを知らない馬。
 
 
一気に詰まらない差、もどかしさの中で、それでも詰めた。
 
 
 
抜け出したのは、ハーツクライ。
 
勝つことの難しさ、思い知らされ続けたハーツクライ。
 
 
油断などしない。
 
だが、喜びが、爆発しそうだ!
 
 
2番手に上がり、懸命に追うリンカーン。
 
 
外からやってきたディープインパクト。
 
リンカーンをねじ伏せた。
 
 
後は、後はハーツクライ。
 
 
懸命に伸ばした脚。
 
 
ゴール!
 
 
届かなかった。
 
 
ハーツクライ、ルメールの左手が高々と上がった。
 
喜びのガッツポーズ。
 
 
ハーツクライ、負けを知らない男に勝った。
 
 
 
1着ハーツクライ
半馬身
2着ディープインパクト
1馬身4分の1
3着リンカーン
1馬身4分の1
4着コスモバルク
半馬身
5着コイントス
 
 
(つづく)