宝塚記念、2着。

ついに途切れたテイエムオペラオーの大記録。G1連続勝利は『6』で止まった。


テイエムオペラオーに負け続け、5連続2着だったメイショウドトウ。

あり得ないテイエムオペラオーの大記録の陰で、あり得ない『2着の悲哀』を感じ続けた。


そして、勝利。

ついに、ついに果たしたメイショウドトウ・・・・・・G1制覇。



だが、それで終わったわけではない。

テイエムオペラオー、メイショウドトウの戦いは続く。


天皇賞秋、前哨戦を使わずメイショウドトウはぶっつけで臨んだ。


テイエムオペラオーは京都大賞典を使い、ステイゴールド1着入線失格による繰り上がり勝利。

結果、勝つには勝ったが強さに翳りが見え始めた、か?テイエムオペラオー。

『反骨魂』で走り抜いて築き上げた王者の誇り。メイショウドトウに、二度負けるワケにはいかない。




テイエムオペラオー、メイショウドトウ、宝塚記念で大きな着順の入れ替わりがあったとはいえ、2頭による1,2着の構図は変わっていない。

他の陣営にとって、2頭の牙城を崩すこと。とてつもない難題でしかなかったのか?


希望の光が見えた馬がいた。ステイゴールドだ。


伯父にサッカーボーイがいる良血サンデーサイレンス産駒。

後ろ脚で立ち上がる、仲間の馬に噛みつこうとする、乗りかかろうとする・・・・・・気性が激しすぎるやんちゃ坊主は、そのままに競走馬となった。

G1・2着4回、実力の片鱗を見せながら、年を重ねるごとにG1勝利とは離れていったステイゴールド。

7歳、後がない年になって何かが変わったか? 日経新春杯1着、ドバイに渡ってシーマクラシック(当時はG2)1着、宝塚記念4着。

秋、京都大賞典ではテイエムオペラオーに半馬身先着の1着入線。直線、ナリタトップロード、テイエムオペラオーと叩き合い、抜け出す時に斜行、テイエムオペラオーと接触、煽りを喰ったナリタトップロードは落馬。ステイゴールドは失格となった。

気性の激しさは相変わらずのステイゴールド。だが、テイエムオペラオーに先着した事実は大きい。

残りわずかとなった競走生活。鞍上に武豊を迎え、G1獲りへ・・・・・・『2強』に挑む。




ダートで全5勝、芝4戦未勝利ながら芝G1・マルチャンピオンシップを勝ったアグネスデジタル。

安田記念は11着と敗れ、ダート重賞の船橋・日本テレビ盃を勝ち、ダートG1・盛岡・マイルチャンピオンシップ南部杯を制した。

芝・ダート両方のG1馬という、史上初の快挙を成し遂げたアグネスデジタル。


13番人気で得たマイルチャンピオンシップ・芝G1制覇。安田記念11着、よりフロック視される部分は大きかった。

芝でのG1勝利をまぎれもない実力とするために・・・・・・急遽、天皇賞秋への参戦が決まった。アグネスデジタルにとっては好走するしかない、一戦だった。


外国産馬であるアグネスデジタル。天皇賞秋に出走できる外国産馬は2頭。メイショウドトウに次ぎ獲得賞金2番目での出走であったが、それによって出走できなくなったのがクロフネだ。

NHKマイルカップを制し、ダービー5着。距離を考えて菊花賞を諦め天皇賞秋挑戦を決めていた。古馬テイエムオペラオー・メイショウドトウvs若きクロフネの対戦構図は、興味津々であることは間違いない。

アグネスデジタルの急遽の参戦。一部ファンからの非難のマトとなったことは否めない。

また、クロフネにとって『天皇賞秋出走不可』の事実は、『怪物』クロフネを出現させる大きな転機であったことを、この時は・・・・・・誰も気づかなかった。





10月28日、天皇賞秋。

1.ロサード
2.メイショウドトウ
3.トーホウドリーム
4.ステイゴールド
5.サイレントハンター
6.テイエムオペラオー
7.メイショウオウドウ
8.イブキガバメント
9.サイレントセイバー
10.アグネスデジタル
11.ダイワテキサス
12.ジョウテンブレーヴ
13.トレジャー


1番人気テイエムオペラオー、2番人気メイショウドトウ、3番人気ステイゴールド。

4番人気アグネスデジタル、5番人気イブキガバメント。

3番人気ステイゴールド、武豊人気が加わって単勝4.5倍。4番人気アグネスデジタル20.0倍、前3頭との人気の差は際立っていた。



8歳となった逃げ馬サイレントハンターが出遅れた。

先頭に立ったのは、なんと、メイショウドトウだった。

テイエムオペラオーが2番手、3番手内からステイゴールド。


人気馬がそろって前を行く、稀な展開に場内は沸いた。


最後方、サイレントハンターまで8馬身差、まったくのダンゴ状態だった。



小雨が降りしきる重馬場。1000m62秒2、スローペース。

メイショウドトウの2番手にトレジャーが上がり、さらにはジョウテンブレーヴが3番手に上がる。


控えたテイエムオペラオー、ステイゴールド。

3,4コーナーでは後方にいたアグネスデジタルが上がりを見せた。



直線に入った。

メイショウドトウ、逃げ切りなるか!


内から伸びを見せるのはステイゴールド!

トレジャー、ダイワテキサスが外から迫る!


トレジャー、ダイワテキサスの間を割って、伸びてきた。

テイエムオペラオーだッ!


勝つために・・・・・・メイショウドトウを追いかけなかった和田竜二。

他の馬に追いかけさせて、勝負所を待った。


並べばしぶとい脚を持つメイショウドトウ。

抜け出す時は、一気に突き放す!


2馬身、3馬身、突き放したテイエムオペラオー。


まだ脚は残っているメイショウドトウ。懸命に追う、が、

テイエムオペラオーに迫れない!


内から伸びかけたステイゴールド。武豊は愕然とした。

内へもたれかかる悪癖。このままではラチにぶつかる。


まったく追えない状況。

ステイゴールドの天皇賞挑戦は終わった。



テイエムオペラオー、王者復活!


その時、


馬場の大外、


アグネスデジタルがやってきた!



強さと脆さが同居する馬。ダートも芝もない。


鞍上・四位洋文はアグネスデジタルの心に賭けた。



デジタルよ、燃えろォーッ、完全燃焼だッ!



大外から伸びるアグネスデジタル。

抜け出したテイエムオペラオー。


迫った、


迫った!


迫ったぁーッ!



ゴール寸前、


最後の爆裂脚。


アグネスデジタルが、テイエムオペラオーをとらえた。



王道G1連続7レース、テイエムオペラオー、メイショウドトウが守った牙城。


ぶっ壊した、アグネスデジタル!


1着アグネスデジタル

2着テイエムオペラオー

3着メイショウドトウ

4着イブキガバメント

5着ダイワテキサス


(つづく)