古馬王道のG1を勝ち続けるテイエムオペラオー。
天皇賞春を勝ってG1連勝記録を『6』に伸ばした。
G1勝利数も『皇帝』シンボリルドルフと並ぶ『7』とし、歴代1位。
走るたびに大記録を更新するテイエムサウスポー。
宝塚記念を制覇することによってさらに、さらに高みをめざすか?
あくなきチャレンジャー、テイエムオペラオー。
彼の中に大王者の驕りも、高ぶりもない。
良血でもない名もなき馬。『反骨魂』を支えに走り続け、力を蓄えてきた。
真一文字にめざすゴール。テイエムオペラオーにあるのは、それだけだ。
前年の宝塚記念からG1・5連続、テイエムオペラオーの2着。
メイショウドトウにとっては悔しさあふれる怪記録。
着差はわずか。勝てない相手じゃない、はず。
初対戦、宝塚記念。クビ差2着。天皇賞馬と互角の戦い、『やれるんだ』自信が湧いた。
ただただ、嬉しかった。
テイエムオペラオーに勝つために、前で勝負、後ろで勝負。ひたすら勝つために策を練った、実践した。
勝てない・・・・・・悔しさ、もどかしさが生まれた。どうあっても勝てないテイエムオペラオーなのか?
G1・2着5回。これほどのチャンスを逃しては、もう勝てない・・・・・・それが競馬の常識。
ならば、
G1・5連続2着は常識なのか?・・・・・・そのことすら、あり得ないこと。
さらに言えば、購入価格1000万円のテイエムオペラオーより安い、500万円の外国産馬メイショウドトウ。
オープンで活躍することすら、競馬界の常識は打ち破ってきた。
打ち破る、何があっても打ち破る!
メイショウドトウの前に立ちはだかるテイエムオペラオー。
ドトウは自らを鼓舞するしかなかった。
1着テイエムオペラオー、2着メイショウドトウ。古馬王道G1で示す完璧なまでのワン・ツー。
刻まれ続ける大記録に、競馬ファンは拍手喝采。
その心の隅では、2頭の牙城を崩す存在の出現を期待する、願望もあった。
若い4歳、皐月賞・菊花賞馬エアシャカール、アドマイヤベガの全弟アドマイヤボスだ。
天皇賞春はエアシャカール8着、アドマイヤボス5着。
歯が立たなかった。
付きだした疑問符。『今年の4歳レベルは低いんじゃないか?』
世代の頂点に2度立ったエアシャカール。
母は2冠馬、兄はダービー馬、世代一の良血馬アドマイヤボス。
『まだ本当の力は、出してない』、不安の中で、若さに期待は集まった。
6月24日、宝塚記念。
1.ミッキーダンス
2.ダービーレグノ
3.メイショウドトウ
4.テイエムオペラオー
5.トーホウドリーム
6.ホットシークレット
7.ダイワテキサス
8.エアシャカール
9.ステイゴールド
10.アドマイヤカイザー
11.アドマイヤボス
12.マックロウ
1番人気テイエムオペラオー、2番人気メイショウドトウ、3番人気エアシャカール。
4番人気アドマイヤボス、5番人気ステイゴールド。
テイエムオペラオー、メイショウドトウの強さに出走をためらったか?12頭立てとなった宝塚記念。
ハナを切ったのはホットシークレットだ。
新馬戦で男馬相手に馬っ気を出したという変わり種。1、2戦を最下位に終わり、去勢されセン馬となった。ある意味、個性あふれる逃げ馬。
2番手にアドマイヤカイザー。
メイショウドトウ、アドマイヤボスが並んで行った。
ミッキーダンス、ダイワテキサスが行き、テイエムオペラオーがそのあとだ。
後方から行くのはステイゴールド。
G1出走17戦目だ。G1・2着4回は、もう2年ほど前。夢は、夢のままに終わるのか?
このままだと種牡馬の道は、ない。
後方2頭目にエアシャカール。
マックロウが最後方にいた。
ホットシークレットのペース。
1000m通過、61秒3。
3コーナー。
内からミッキーダンスが2番手に上がり、3番手に上がったメイショウドトウ。
鞍上・安田康彦が賭けに出た。
前でテイエムオペラオーを待って、待って勝負に出ても、ゴール前ではわずかに交わされた。
ならば、
仕掛けた。前を行くミッキーダンス、ホットシークレットを交わし、4コーナーでは先頭に立った。
テイエムオペラオーは待たない!先に行くッ。
あとは、ドトウ、がんばってくれぇーッ!
4コーナー、まだ中団にいたテイエムオペラオー。
外から上がるステイゴールド、エアシャカール、完全に包まれた。
その時だ。
激流の中で行き場を失って、ズルッと下がった!
直線、先頭に立ってゴールをめざすメイショウドトウ。
内で粘るホットシークレット。
後方に下がったテイエムオペラオーが馬体を立て直し、追い迫る。
その前にはステイゴールド、エアシャカールがおり、
その5馬身前に、メイショウドトウ、ホットシークレットがいた。
懸命に追い上げるテイエムオペラオー・和田竜二。
エアシャカールを抜き去り、
意地を見せ伸びるステイゴールドに追いつき交わし、
必死で粘るホットシークレットに並んだッ!
1馬身4分の1、
前でゴールを駆け抜けていたメイショウドトウ。
無我夢中。
来るなら来いッ!
ゴールしか見なかったメイショウドトウ。
ふと、我に返った時、場内の大歓声は自分のためにあった。
まだ、勝ったことが信じられなかった。
1着メイショウドトウ
2着テイエムオペラオー
3着ホットシークレット
4着ステイゴールド
5着エアシャカール
(つづく)