春のマイル王決定戦はフェアリーキングプローン、ディクタット、2頭の外国馬にワン・ツーを決められた。

秋のマイル王は誰か? マイルチャンピオンシップには6頭のG1馬が登場した。



安田記念は9着だったが、前年のマイルチャンピオンシップ3着、スプリンターズS優勝の外国産馬ブラックホーク。6歳の載冠だった。

高松宮記念4着、安田記念9着、スプリンターズS3着、やや翳りが見えた7歳。


マイル5勝の実績あるブラックホークを『この馬スプリンターだよ』、見抜いた横山典弘。

その進言通りスプリンターズSを制した。その後、勝てない中でもスプリントG1に良績を残すようになったブラックホーク。

だが、決してマイルが悪いワケではないはず。前年3着の実績。

遅咲きのスプリント王・・・・・・マイル王もめざす。



彷徨える『超良血』キングヘイローとて同じ。

G1制覇を求め続け、ようやく勝ったG1がスプリント・高松宮記念。

マイルチャンピオンシップ2着、安田記念3着・・・・・・マイル王も、獲りに行く。



新馬戦2着、1着。1勝馬で出走した朝日杯3歳S(芝1600m)を制した外国産馬エイシンプレストン。

アーリントンカップ(芝1600m)、ニュージーランドトロフィー4歳S(芝1600m)を連勝も、骨折。NHKマイルカップを断念。

10月、スワンSで復帰、6着。

休み明け2走目、マイルに賭ける。



スプリンターズS、16番人気・単勝257.5倍、ダイタクヤマトの大勝利。

世間を、ファンをアッといわせた逃亡劇。

父はマイルチャンピオンシップ・2勝、ダイタクヘリオス。

父ダイタクヘリオスの甥がダイタクリーヴァ。


スプリンターズS勝ちの後、スワンS(芝1400m)でシンボリインディ、マイネルマックスを打ち破り、勝利。

父に続けるか? マイル王の道。



朝日杯3歳Sを制して29戦、走り続けるマイネルマックス、7歳。

続く不振、その中でマイラーズカップを勝った。

マイルチャンピオンシップ前のスワンSでは3着、がんばりを見せた。

まだまだ終われない!3歳チャンプ。



新馬戦2着の後、4連勝でNHKマイルカップを制した外国産馬シンボリインディ。

その後、放牧中に馬房で暴れ、大ケガをした。

ケガは月日が治した。だが、運命が狂ったか? 

14,9,9,5,10,5着。あの強さはどこへ行った。


秋9月、京成杯オータムハンデで1年4カ月ぶりの勝利。スプリンターズSは14着も、スワンSで2着。

運命は、自ら切り拓く。復活へ・・・・・・懸命だった。




6頭のG1馬を打ち負かそうと燃える馬たち。

筆頭は皐月賞1番人気・2着、ダービー2番人気・12着。4歳クラシックの有力馬ダイタクリーヴァだ。


父は、4戦4勝で引退したサンデーサイレンス初年度産駒フジキセキ。

母スプリングネヴァーの半兄はマイルチャンピオンシップ2勝のマイル王ダイタクヘリオス。


十分すぎるマイル王の素材。3000m長距離・菊花賞を回避、マイルチャンピオンシップで古馬に挑む。



復帰2戦目で秋華賞2着、粘り込んだ3歳女王ヤマカツスズラン。

重賞3勝、宝塚記念をテイエムオペラオーの3着ジョービッグバン。

宝塚記念7着、天皇賞秋10着から参戦、メイショウオウドウ。



ダート10戦5勝、2着3回、3着1回。地方ダート重賞2勝、中央ダートではユニコーンSを制し、武蔵野S2着から参戦してきた外国産馬アグネスデジタル。

新馬戦から4戦手綱を取った福永祐一、5戦目以降乗り続ける的場均がともに語る『芝でも走る』。

芝成績。もみじS(オープン)8着、クリスタルカップ(G3)3着、ニュージーランドトロフィー4歳S(G2)3着、NHKマイルカップ(G1)7着。

芝でやれないワケはない!

3歳時、的場均が初めてアグネスデジタルに乗った時に感じた線の細さ。『こんな弱々しい体で大丈夫なのか?』 それでいて2着馬に7馬身差の圧勝。

本物の体になれば・・・・・・どんな馬になるんだ! 大いなる楽しみをもった。

騎手生活も最後を迎えようとしているベテラン騎手・的場均。


ライスシャワーでミホノブルボンの『3冠』を阻み、メジロマックイーンの天皇賞3連覇を阻止した男。『ヒットマン』の異名を取る的場均。

冷酷無比のイメージ。真は、つねに真摯に馬と向き合う騎手だった。

どんな大競走に勝っても、決してガッツポーズはしない。

『僕が勝ったのではない、馬が勝たせてくれたのだから。
僕だけが勝ったのではない、その馬に関係した全員で勝ったのだから。
僕が馬の上で興奮したり、格好をつけたりすることは必要ない。そんなことより、その馬を無事に止めることが、何よりも大事なことだ。ゴールをトップで通過しただけでは終わらない。無事に馬が止まって、何事もなく馬房に戻ってこられたときにこそ、レースは終わるのだ』


引退間近の大ベテランが、アグネスデジタルとともに臨むマイルチャンピオンシップ。

13番人気、いくら人気薄だろうが馬を信じ、少しでも上位に持って来ることに全力を注ぐ。

そして、一番の願いは・・・・・・馬が無事で走りきること。




11月19日、マイルチャンピオンシップ。

1.ヤマカツスズラン
2.エイシンプレストン
3.ダイワカーリアン
4.ダイタクヤマト
5.マイネルマックス
6.ビーチフラッグ
7.メイショウオウドウ
8.キングヘイロー
9.ビッグサンデー
10.アンブラスモア
11.ダイタクリーヴァ
12.エイシンルバーン
13.アグネスデジタル
14.ジョービッグバン
15.シンボリインディ
16.ミッドナイトベッド
17.スギノハヤカゼ
18.ブラックホーク


1番人気ダイタクリーヴァ、2番人気ブラックホーク、3番人気シンボリインディ。

4番人気エイシンプレストン、5番人気キングヘイロー。


好スタートを切ったのは大外ブラックホークだった、が、

内枠勢がドンドン攻める。ヤマカツスズランが行った、ダイワカーリアンが行った。

アンブラスモア、ビッグサンデー。すぐあとからダイタクヤマト、キングヘイローも行った。


中団まで下がったブラックホーク、ジョービッグバン、エイシンプレストン。

エイシンルバーン、シンボリインディ、ひしめく馬群。


後方14番手から行ったのはダイタクリーヴァ、1番人気だ。

その後ろにアグネスデジタル、マイネルマックス。

最後方がメイショウオウドウ。



流れる展開。


4コーナー、外から進出するエイシンプレストン、キングヘイロー、ブラックホーク。


ヤマカツスズランを先頭に、直線へ向かった。


ヤマカツスズランに迫るダイワカーリアン。


ズラーッと横に広がった馬群。


ダイワカーリアンが抜け出した瞬間、内2頭目からぶち抜いて来たのがダイタクヤマトだ!


父ダイタクヘリオスの血の力。



そのダイタクヤマトを追いかけて、同じ勝負服、ダイタクリーヴァが矢のように伸びてきたッ!


伯父ダイタクヘリオス、マイル王の血はここにもッ!



2頭並んだ『ダイタク』。


リーヴァが、前に出た!



最内を通って、末脚を炸裂させたのはメイショウオウドウ!



大外から、


金色の光りが一閃した。



鮮やかな栗毛色の馬体。



華奢で弱々しさのあった栗毛馬。しっかりと、しっかりと、体力をつけた。



アグネスデジタル。


鞍上・的場均。



研ぎ澄ました末脚、



爆発させた!




懸命に押した的場均。


アグネスデジタルは、ゴール前、ダイタクリーヴァをとらえた。


マイル王、アグネスデジタル。



ゴールに飛び込んだ的場均。

優勝の喜びは、まだ噛みしめない。


何事もなかったようにスピードを緩め、『よくやった、デジタル』 心の中で叫んだ。



1着アグネスデジタル

2着ダイタクリーヴァ

3着メイショウオウドウ

4着ダイタクヤマト

5着エイシンプレストン


(つづく)