春秋のマイル王決定戦。安田記念とマイルチャンピオンシップ。

春の安田記念でグラスワンダーを破って勝利したエアジハード。

前年、春秋連覇したタイキシャトルに続く連覇を狙った。


生涯13戦11勝、2着1回、3着1回。海外G1制覇を含めG1・5勝のタイキシャトル。エアジハードにとって、追いつける相手ではなかった。遠い、遠い存在。

それでも、なんとか近づきたい。

春秋連覇して、マイル王になるッ!




桜花賞馬キョウエイマーチ。メジロドーベルを4馬身ちぎった。

そのメジロドーベルにオークスで負け、秋華賞で負け、短距離路線を進んだ。

決してラクではない牡馬相手。マイルチャンピオンシップ、タイキシャトルの2着。スプリンターズS、タイキシャトルの11着。マイツチャンピオンシップ、タイキシャトルの6着。フェブラリーS(ダート)、メイセイオペラの5着。高松宮記念、マサラッキの4着。安田記念、エアジハードの9着。南部杯(ダート)、ニホンピロジュピタの2着。

ダートG1も走った。キョウエイマーチのあくなき戦い。負けて、負けて、満たされるものはなかった。

それでも・・・・・・戦わない相手、メジロドーベルががんばる限り、キョウエイマーチは走り続ける。




彷徨える『超良血』キングヘイロー

いつしか、遠い存在となったスペシャルウィーク、セイウンスカイ。

『3強』といわれたクラシックは2着、14着、5着、無惨だった。

古馬になって、マイルG1・11着、中距離G1・8着・7着。


何をめざして、何を求めて走るのか? 迷いしかなかった。良血ゆえの苦しみ。




ヨーロッパの良血、ノーザンダンサーの直仔ヌレイエフを父に持つブラックホーク。イギリスからやって来た外国産馬。タイキシャトルと同世代。

体質の弱さと怪我が重なり、力を存分に発揮できぬまま6歳を迎えた。

1年2カ月の休養終えて復帰した6歳夏、関屋記念2着。京成杯オータムハンデ3着、スワンSを勝利して、マイルチャンピオンシップに臨む。

走れなかった時間を取り戻すかのように、走りまくるブラックホーク。


つねに、『いま』しかなかった。




7歳、朝日杯2着馬エイシンガイモン。スワンSで2年3カ月ぶりの勝利のなかで・・・・・・。

4歳、朝日杯2着馬エイシンキャメロン。惨敗続きの闇のなかで・・・・・・。

4歳、NHKマイルカップ2着馬ザカリヤ。栄光まであと一歩。夢見たなかで・・・・・・。


現実を、突き抜けたい!




11月21日、マイルチャンピオンシップ。

1.ビッグサンデー
2.ドラゴンライト
3.ダイワテキサス
4.エイシンガイモン
5.エイシンルバーン
6.エアジハード
7.ザカリヤ
8.アドマイヤカイザー
9.キングヘイロー
10.キョウエイマーチ
11.チェックメイト
12.ミッドナイトベッド
13.スピードスター
14.ブリリアントロード
15.ブラックホーク
16.ニッポーアトラス
17.エイシンキャメロン
18.スギノキューティー


1番人気エアジハード、2番人気ブラックホーク、3番人気キョウエイマーチ。

4番人気キングヘイロー、5番人気アドマイヤカイザー。



安田記念では行かなかった。5番手に下げたキョウエイマーチ。

ダッシュよく飛び出した。

やはり、行くのがキョウエイマーチ。逃げて、活路を開く!


内から追いかけたビッグサンデー。

エイシンキャメロン、エイシンガイモン、エイシンルバーン、『エイシン』3頭が行った。


その後ろに付けたのが、ブラックホーク。


エアジハード、キングヘイローが並んだ中団。


重賞未勝利、5番人気となった外国産上り馬アドマイヤカイザーは後方、直線勝負に賭けた。



一気に4コーナーへ向かう速い流れ。


軽快に逃げるキョウエイマーチ。

エイシンガイモンが襲いかかろうと脚を伸ばし、

先団めがけて上がって行くブラックホーク。


その外から、エアジハードがやってきた。


直線、懸命に粘るキョウエイマーチ。

差す!ブラックホーク。


さらに、差す!

エアジハードだッ!


グラスワンダーを差した脚。

負けてはいられない!


ブラックホークを交わし切った。


大外から、


唸りを上げた末脚。


キングヘイローだッ!


彷徨ってはいられない。



スペシャルウィークは、スペシャルウィーク。

セイウンスカイは、セイウンスカイ。

何を気にする。オレは、オレ。自分なりに、自分の走りをするだけだッ。

焦るな、慌てるな、結果を気にするな!


自分の力を、ありのままの自分を、ただ、ただぶつけろ!



ありったけの力を末脚にブチ込んだキングヘイロー。

迷いはなかった。



末脚一閃。

ブラックホークを差した!エアジハードに迫った。



タイキシャトルに近づきたい・・・・・・。

自信のエアジハード。


襲い来るキングヘイローの勢いを感じた。


一瞬の武者震い。


さらに、激しく回転させた脚。



ゴールへと、突き抜けた!


マイル王への突撃、春秋連覇。


1着エアジハード

2着キングヘイロー

3着ブラックホーク

4着アドマイヤカイザー

5着キョウエイマーチ


(つづく)