宝塚記念でグラスワンダーとの初対決に敗れたスペシャルウィーク。

同世代の外国産馬2頭、『超新星』エルコンドルパサー、グラスワンダーには勝てないのか?


天皇賞春で日本馬の頂点に立ったスペシャルウィーク。お山の大将。


10月3日、フランス・ロンシャン競馬場。凱旋門賞、モンジューの2着。歴史に残る惜敗を演じたエルコンドルパサー。

日本競馬界にとっては、大快挙だった。世界に通じた、凄いヤツ。


一方のスペシャルウィークは、10月10日、京都大賞典で10頭立て7着に敗れてしまった。

天皇賞秋の前哨戦。負けてはいけない相手に・・・・・・生涯初の馬券外の惨敗。


何かが狂ったか? 調教で500万下の条件馬にも遅れた。

強いスペシャルウィークを取り戻すため、陣営は鬼となった。




天皇賞春でスペシャルウイークの3着に敗れたセイウンスカイ。

G1、スペシャルウィークと2勝2敗。まだ、勝負付けは終わったワケではない。


8月、札幌記念。主戦・横山典弘は逃げなかった。驚く後方待機策。

10頭立て7番手から大捲り、差し切った。


あえて戦法を変えて、天皇賞秋、盾獲りに出るのか?




天皇賞春2着、メジロブライト。

2400m以上の距離では強さを見せ、長距離の『メジロ』の伝統を守る。


スピード主体に変わりつつある日本競馬。2000mでも、強さを見せつけなければ・・・・・・『メジロ』の明日はない。




安田記念でグラスワンダーをとらえ、ハナ差競り勝ったエアジハード。

マイル王となった勢いで、天皇賞秋に挑戦。

マイル=1600mを超える未知なる距離。駆け抜けてみせる!




『皇帝』シンボリルドルフ。代表産駒トウカイテイオー。

しばらく出ていない活躍産駒。


ツルマルツヨシが燃えた。

デビューは遅れた、4歳5月。新馬戦は終了し未勝利戦からデビュー。5番人気も、勝った。

体質が弱く、出走、休養を繰り返した。

走ることすら辛い状況でも、がんばった。


偉大な父シンボリルドルフの血が、ツルマルツヨシを動かした。


1着、5着、1着、取消、1着、3着。朝日チャレンジカップ(G3)1着、京都大賞典(G2)1着。

京都大賞典ではスペシャルウィーク、メジロブライト、テイエムオペラオー、ステイゴールド、錚々たるメンバーを打ち破った。

ツルマルツヨシは胸を張って走る。

父さん、見ていてください。あなたの息子として、精一杯走ります!




天皇賞春2着、宝塚記念2着・3着、天皇賞秋2着、有馬記念3着、G1制覇に最も近くいつも伏兵、ステイゴールド。

30戦3勝、21戦勝ち星なし。重賞未勝利。

G1を・・・・・・勝てる日は来るのか?




10月30日、天皇賞秋。

1.エアジハード
2.アンブラスモア
3.サクラナミキオー
4.メジロブライト
5.ダイワテキサス
6.ステイゴールド
7.セイウンスカイ
8.ユーセイトップラン
9.スペシャルウィーク
10.サイレントハンター
11.スティンガー
12.シルクガーディアン
13.クリスザブレイヴ
14.ホッカイルソー
15.メイショウオウドウ
16.キングヘイロー
17.ツルマルツヨシ


1番人気セイウンスカイ、2番人気ツルマルツヨシ、3番人気メジロブライト。

4番人気スペシャルウィーク、5番人気エアジハード。


京都大賞典惨敗、調教遅れ、4番人気にまで人気を落としたスペシャルウィーク。-16㌔の馬体重470㌔。ダービー制覇の468㌔に近づけた。鬼となって絞り上げた陣営。スペシャルウィークにとって、吉と出るか?凶と出るか? 神のみぞ知る。

ステイゴールドは12番人気だった。

秋華賞ではなく、古馬牡馬相手に挑戦したスティンガーは8番人気。

彷徨える『超良血』キングヘイローは9番人気。

『ノーザンテースト最後の大物』といわれたクリスザブレイヴ。2年の休養を挟んで4連勝、甦った。10戦連続1番人気。7番人気だった。

皐月賞4着、ダービー4着、菊花賞3着、天皇賞春3着、ホッカイルソー。3年をかけて屈腱炎から甦った。復帰7戦目でオールカマーを勝利。8歳、11番人気。



1枠2番、アンブラスモアがハナを切る。

サクラナミキオー、サイレントハンターが追いかける。

やはり、

セイウンスカイは行かない。


8番手。横山典弘は中団に構えた。珍しくゲート入りを嫌がったセイウンスカイ。上がったテンションをなだめて横山典弘は慎重に、馬群に入れた。

周りにひしめくステイゴールド、スティンガー。すぐ後ろにツルマルツヨシ。


好位につけたのがキングヘイロー、クリスザブレイヴ、エアジハードだ。


差し脚に賭けるメジロブライト、ユーセイトップラン、ホッカイルソーが後方に陣取った。

そして、

後方4頭目につけたのが、スペシャルウィークだ。

先行・好位策をやめて、武豊がスペシャルウィークの原点を見つめた。

4歳若駒の頃の、後方一気の切れ味。



縦長の馬群。

1000m、58秒0。ハイペース。


激しい流れ。

4コーナーを回って勢いよく飛び出したのはエアジハードだ。

スティンガーがピッタリ張り付いた。


最内を狙ったキングヘイロー。


懸命に馬群を割って出るステイゴールド。

外からツルマルツヨシ。


大外に並んだセイウンスカイ、スペシャルウィーク。


混戦のなかで、抜けたエアジハードが一気にゴールをめざした。

喰らいつくスティンガー。


渾身の力で伸びてきたのは、ステイゴールドだ!

もう、2着も、3着もいらないッ。


ほしいのは、一番!


スティンガーを交わし、エアジハードに襲いかかった。




その時だ。


外から、来たぁあッー!


場内が、興奮の坩堝と化した。


ステイゴールドに迫った、スペシャルウィークだッ!



鬼となったスペシャルウィーク。


スティンガーを、エアジハードを、なぎ倒した鬼脚が、


突き抜けた。



わずかクビ差だが、


ステイゴールドをとらえて、


抜き去った。



タマモクロス以来の天皇賞春秋連覇。


1着スペシャルウィーク

2着ステイゴールド

3着エアジハード

4着スティンガー

5着セイウンスカイ


(つづく)