プリモディーネが『桜の女王』に輝いた。

3歳時、2戦2勝。『3歳女王』は狙わずに休養。4歳、トライアル4着と敗れながらも、桜花賞で見事に復活。

爛漫の春を制した。


予定のローテーション・・・・・・桜花賞をぶっつけで臨んだ『3歳女王』スティンガー12着、大きく分かれた明と暗。




クラシック第1弾、皐月賞。

4戦3勝、3着1回で朝日杯3歳Sを制覇。3歳チャンプとなったアドマイヤコジーン。

右トモを骨折(ボルトを埋め込む手術)、長い戦線離脱となった。



だが、『アドマイヤ』の一番のクラシック候補は別にいた。

父はサンデーサイレンス、母は桜花賞・オークス『2冠馬』ベガ。

生まれもっての『約束』された良血アドマイヤベガだ。


『血で走る』ともいわれるサラブレッド。より強く、より速く走るために繰り返される血の配合。

そこから生まれる『良血』。

父と、母と、受け継いだアドマイヤベガの血は・・・・・・強く、速く走ること。生まれる前から、決まっていた『血の約束』。


アドマイヤベガには、もう一つの『約束』があった。それは、消された同胞(はらから)への約束。

母ベガが身籠ったのは二つの心臓だった。双子である。

『双子は競走馬として大成しない』・・・・・・馬産界の常識。一つの心臓は消され、アドマイヤベガだけが世に送り出された。


闇に消された同胞(はらから)へ。

幼いアドマイヤベガが背負った十字架は重すぎる。だが、背負わねばならない十字架。

それが『約束』。



3歳11月。デビュー戦で2位に2馬身半の差を開いて1位入線した。だが、直線で斜行したとして6着降着となった。鞍上・武豊は騎乗停止となり、ジャパンカップのスペシャルウィークに乗ることがならなかった。

未勝利の身で次走はエリカ賞(5000万下)出走となった。1勝馬を相手に走ったアドマイヤベガは単勝1.2倍、1番人気。同じサンデー産駒スリリングサンデーにクビ差、勝利。

距離2000mの重賞ということで、クラシックの登竜門となりつつあるラジオたんぱ杯3歳S。アドマイヤベガは後方から4コーナー好位に押し上げ、直線抜け出し、マイチカネキンノホシに半馬身差の勝利。

クラシック最有力候補となった。


『約束』へ・・・・・・我武者羅(がむしゃら)に突き進む。それが、アドマイヤベガ。


4歳になって、弥生賞から始動。

単勝1.5倍、1番人気。


勝つことしか考えなかった。


後方を進み、4コーナー13番手。

鞍上・武豊からゴーサインが出るや、矢のように伸びた。


前行く馬を蹴散らした。


だが、1頭、蹴散らせなかった。


アドマイヤベガより1馬身速くゴールした馬がいた。


ナリタトップロードだ。

かつて阪神3歳Sを8馬身ちぎったサッカーボーイの仔。



初めて、自分より速くゴールされた。


皐月賞は、もっともっと強豪が出てくる。

みんな、みんな、狙うのは『てっぺん』。



だが、アドマイヤベガには『約束』がある。


絶対、絶対、クラシックを獲ってやるッ!



一度の敗戦を闘争心の糧とする・・・・・・それが、『良血』アドマイヤベガだった。



(つづく)