『3強』の一角、残された馬の誇りがあるマーベラスサンデー。

大物牡馬を打ち崩すことこそ『女帝』の証し、エアグルーヴ。


有馬記念で激突する2頭。


みんなの夢が走る有馬記念。すべての馬が『てっぺん』を狙う。

それぞれの思いを乗せて。




父メジロライアンが果たせなかった夢。オグリキャップの2着。悔しい『無冠の帝王』。

娘メジロドーベルが挑む。

阪神3歳牝馬S優勝、オークス優勝、秋華賞優勝、G1・3勝。メジロライアンをG1馬の父とした孝行娘。

母メジロビューティーとは適合しない血といわれた。母乳も飲めなかった。

それでも生きた。生きて走った。自分でも驚くほどの推進力。


こスピードは、このスタミナは・・・・・・母がくれた、父がくれた。

もっと、もっと、母のために、父のために走るんだ!


メジロドーベル、美少女の目は、清く清く澄んでいた。





ジャスティス=正義。

シルクジャスティスの正義はどこにあるのか?


同い年・同厩舎の『いじめられっ仔』エリモダンディー。放っては置けなかった。

エリモダンディーを威嚇する馬の前に立ちはだかった。許せなかった、それだけのこと。

来る日も、来る日も、調教でともに走るようになり、促がされるように真面目に走るようになったのは、シルクジャスティスの方だった。

ともに出走したダービー。ジャスティス2着、ダンディー4着。菊花賞はジャスティス5着、ダンディー10着。

悔しかったけど、楽しかった。


有馬記念、シルクジャスティス1頭の出走。エリモダンディーは京阪杯に挑戦、重賞初勝利をつかんだ。

今度は、君の番だよ。願うエリモダンディー。


もう一人、願っていた男がいた。鞍上・藤田伸二だ。

『ジャスティスが一番強い』、言い続けてきた男。


シルクジャスティスは許せなかった。ダービー2着で満足していた自分。菊花賞1番人気も、極限まで走リ切れなかった甘さ。

ジャスティスの正義は・・・・・・自分を慕い、自分を信じてくれている者たちに、報いることにある。

勝つッ! 男の正義を貫き通す。





12月21日、有馬記念。

1.インターユニーク
2.ダンスパートナー
3.マーベラスサンデー
4.ローゼンカバリー
5.マイネルマックス
6.マイネルブリッジ
7.カネツクロス
8.テイエムオオアラシ
9.オースミタイクーン
10.タイキブリザード
11.サンデーブランチ
12.エアグルーヴ
13.マウンテンストーン
14.シルクジャスティス
15.メジロドーベル
16.アロハドリーム


1番人気マーベラスサンデー、2番人気エアグルーヴ、3番人気メイロドーベル。

4番人気シルクジャスティス、5番人気ダンスパートナー。



もう2年弱、勝ち星のないカネツクロス。重賞連勝、旋風を巻き起こした姿は何処へ。

追い求め、追い求めるかのようにハナを切った。


2番手につけたのは、3歳チャンプ、朝日杯の覇者マイネルマックス。故障復帰後4戦、掲示板(5着以内)もなし。

積極果敢、取り戻せ! 輝き。


インターユニーク、アメリカ遠征帰りのタイキブリザード、サンデーブランチが続いた。

並んで行ったエアグルーヴ。


中団後ろ、9番手からメジロドーベル。


後方に控えたマーベラスサンデー。

ピッタリと外につけたシルクジャスティス。


ローゼンカバリー、オースミタイクーンと続き、最後方につけたのがダンスパートナーだった。



大歓声が沸き起こり、後押しされる16頭の馬の群れ。


前を見ながら、後ろの気配を全神経で感じ取るオリベエ・ペリエ。エアグルーヴを内に入れた。

エアグルーヴを前方、内に見やりながら中団外を行くメジロドーベル・吉田豊。

後方、どこで行くか!武豊。歴戦の雄、マーベラスサンデーは落ち着き払っていた。

徹底マーク。男・藤田伸二の胸中・・・・・・揺るぎない2文字は、『勝つ』。



熱き心を秘め、馬群は流れた。



3コーナー、動いたのはタイキブリザードだった。

前年に続いて惨敗のアメリカ帰り。母国での屈辱を振り払うかのように、一気に先頭に立った。

アロハドリームが食らいついた。


4コーナーめがけて、渦巻く流れ。

内から上がってきた。エアグルーヴだ!

外からは、メジロドーベル!


押し寄せる強豪牝馬。


馬群を縫って、あっという間にマーベラスサンデーがエアグルーヴの後ろに取りついた!



勝負だッ!



直線、内から先頭に立ったエアグルーヴ。


タイキブリザードの執念は潰えた。

外から上がってきたメジロドーベルも、伸びない!


エアグルーヴに迫ったのは、


マーベラスサンデーだッ!



やっぱり来た。エアグルーヴ、ペリエのムチが唸った!


交わせるか?エアグルーヴを知り尽くす武豊。ゴールで、僅かでも差せばいい。

マーベラスサンデーも知り尽くす男は、ゴール、ギリギリ勝負に賭けた。


馬体を合わせた死闘。

大観衆の目を釘付けにしたマッチレース。



打ち砕いた。


疾風の差し脚が一閃した。


シルクジャスティスだッ!




耐えに耐えたシルクジャスティス。

我慢に我慢を重ねた藤田伸二。



マーベラスサンデーをマークし、ワンテンポ遅らせて、

勝つために、勝つために、この時を待った。


行けェェエエエエーッ! ジャスティス!

おまえが、一番強いんだぁああーッ!



エアグルーヴ、マーベラスサンデーに迫るや、一気に馬体を合わせた。


アタマ、クビ差。


3頭が雪崩れ込んだゴール。



男・藤田の左拳が天を突いた!



1着シルクジャスティス

2着マーベラスサンデー

3着エアグルーヴ

4着ローゼンカバリー

5着オースミタイクーン


(つづく)