アメリカにあるタイキファームで生まれた『大樹ファーム』の期待馬、タイキシャトル。

父はデヴィルズバッグ。9戦8勝、クラシック目前に右前脚の膝に亀裂が入っていることが発見され引退。その父はサンデーサイレンスと同じヘイロー。


脚部、蹄に不安を抱え、日本の美浦・藤沢和雄厩舎に入厩したのは、この年、4歳2月だった。

4月デビュー。7戦6勝、2着1回。走り始めて7カ月足らず、マイルチャンピオンシップを2馬身半差、完勝。


ノンストップでG1制覇まで上り詰めたタイキシャトル。

次の標的はスプリントG1、スプリンターズS・芝1200mだった。


7戦中ダート3戦、3勝。1200m戦は、このダートしか走っていない。




マイルチャンピオンシップ2着の雪辱を・・・・・・桜花賞馬キョウエイマーチもまた、初の芝1200m戦に臨んできた。

マイルのスピードではサイレンススズカを圧倒し、3ハロン(600m)33秒2、5ハロン(1000m)56秒5のスピードを見せつけたキョウエイマーチ。

スプリント戦でも、やれぬワケはない!

タイキシャトルに挑んだ。




前年のスプリントG1、高松宮杯・スプリンターズSを制したフラワーパーク。

マヤノトップガン、フラワーパークのために現役続行を決めたという田原成貴を鞍上に、マイラーズカップ4着、シルクロードS4着、高松宮杯8着、スワンS6着、CBC賞4着。

6歳牝馬。翳りが見えたスプリント女王。


現役最後の勝負、か?




芝1200m・クリスタルカップ1着、ダート1200m根岸S1着、芝・ダートの重賞で活躍する外国産馬ワシントンカラー。

4歳。若さを武器に、ただガムシャラにひた走る。




芝1200mで日本レコードを叩き出した快速エイシンバーリン。

春、高松宮杯ではシンコウキングに負けた、2着。

以降、逃げ潰れが続いたがCBC賞で2着。復活の兆し。


キョウエイマーチ相手に、スプリンターの快速を見せるか。

の逃げるのは、どっちだ?




フラワーパーク4着、コクトジュリアン3着、エイシンバーリン2着。

前哨戦、CBC賞を制したのはスギノハヤカゼだ。


重賞4勝。短距離のスペシャリストとして活躍する和名の外国馬スギノハヤカゼ。だが、G1では高松宮杯の4着が最高。

弾き切れない。悩める実力馬。




国際競走であるスプリンターズS。フランスからキステナ、アメリカからメンズイクスクルーシブ、2頭が海外から参戦した。





12月14日、スプリンターズS。

1.フラワーパーク
2.メンズイクスクルーシブ
3.スギノハヤカゼ
4.ホクトフィーバス
5.キステナ
6.サクラスピードオー
7.コクトジュリアン
8.レシーバー
9.ビコーアルファー
10.ヒシアケボノ
11.エイシンガイモン
12.ワシントンカラー
13.シンコウフォレスト
14.エイシンバーリン
15.キョウエイマーチ
16.タイキシャトル


1番人気タイキシャトル、2番人気キョウエイマーチ、3番人気フラワーパーク。

4番人気ワシントンカラー、5番人気キステナ。



ゲートを真っ先に飛び出したのは15番枠キョウエイマーチだった。

だが、14番枠エーシンバーリンも黙ってはいない。

すぐに並びかけた。


さらに、内から4番枠ホクトフィーバス。


3頭がビッシリ競り合ったハナ争い。


3ハロン・32秒6、ハイペース。


大外16番枠タイキシャトルは6番手から4番手、外々を好位に押し上げた。

その内を懸命に押すサクラスピードオー。


高松宮杯3着シンコウフォレスト。いま一度、いま一度、『冠』を追い求めるヒシアケボノ。

フラワーパーク、ワシントンカラー、電撃戦、位置取り争いに殺到。


後方につけたのはスギノハヤカゼ。末脚勝負にかけた、か?


外国馬キステナ、メンズイクスクルーシブはその後方。



3頭の激しい先頭争いは決着がつかないままに、4コーナーを回った。

ホクトフィーバス、エイシンバーリン、キョウエイマーチ、並んで迎えた直線。


厳しすぎた争い。キョウエイマーチの野望は阻まれた。

前に出ようとするが、脚が動かない。


外から、抜け出してきたのはタイキシャトルだ!


510㌔、力強い躍動。黄金色に輝く栗毛の馬体は、冬枯れの芝を蹴散らした。



追ってきたのはワシントンカラーだ。


さらに、後方から疾風の差し脚。

末脚に賭けたスギノハヤカゼが飛んできた!


懸命に馬群を割ろうとするフラワーパーク、エイシンガイモン。



ゴールをめざすタイキシャトルには、後ろの出来事に過ぎなかった。


前しか見ない。


タイキシャトルは先頭でゴール。



初のマイルチャンピオンシップ・スプリンターズS、マイルとスプリントの両G1制覇。

難なくやってしまった。



4歳、タイキシャトル。


恐るべき短距離王の誕生だ。



1着タイキシャトル

2着スギノハヤカゼ

3着ワシントンカラー

4着フラワーパーク

5着エイシンガイモン


(つづく)