春の安田記念とともに、古馬マイル王決定戦の趣があったマイルチャンピオンシップ。

18頭中7頭、例年になく大挙出走してきたのは4歳若駒だった。


スピードとパワー、エンジンの違いを見せる外国産馬。

9戦5勝、2着3回、3着1回。初重賞出走がマイルチャンピオンシップ。底を見せないアメリカ産トーヨーリレインボー。

NHKマイルカップ、シーキングザパールの2着したブレーブテンダー。


出遅れグセを持ち、後方から、けたたましい追込みを見せるスピードワールド。

5戦4勝でNHKマイルカップの最有力馬となったが捻挫で回避。4歳で安田記念に挑戦。古馬に混じって自慢の追込み。最速の上りで3着に突っ込んだ。

芦毛の4歳ながら、その馬体はすでに白く、疾風の差し脚は白い稲妻。


鞍上に武豊を迎え、万全の態勢でG1獲りに出た。



タイキフォーチュン(NHKマイルカップ)、タイキブリザード(安田記念)、『タイキ』が送り出す新鋭がタイキシャトルだ。

父デヴィルズバッグはアメリカで9戦8勝、クラシック出走前に故障で引退。2着馬につけた平均着差は6馬身という、格段の強さを発揮した馬。

アメリカにあるタイキファームで生まれたタイキシャトルはアイルランドで調教を施され、日本にやって来た。美浦・藤沢和雄厩舎に入厩、岡部幸雄が手綱を取る。

エリート路線に乗り、じっくり育てられ、デビュー3連勝。菩提樹Sでクビ差2着と不覚を取ったが、秋にユニコーンS、スワンSを連勝。

初G1制覇へ・・・・・・マイルチャンピオンシップへ名乗りを挙げた。


岡部幸雄が同じ藤沢厩舎で高松宮杯を制したシンコウキングに騎乗。スワンSからマイルチャンピオンシップ、2戦を横山典弘が騎乗している。



桜花賞馬キョウエイマーチ。

秋華賞はメジロドーベルの2着と敗れ、得意距離のマイルチャンピオンシップに登場。

唯一の牝馬、紅一点。

マイルなら負けない! 赤い気炎を上げる。



制御の効かぬ暴走特急となった天皇賞秋。有り余るスピードをもつサイレンススズカ。

マイルに狙いをつけた。

新馬戦以来の1600m・マイル。若さに任せたとはいえ、パルスビートに7馬身の差をつけて逃げ切った。


キョウエイマーチと、スピード争いを繰り広げるか!



4連勝で朝日杯3歳Sを制し、3歳チャンプとなったマイネルマックス。

順調でない4歳。ぶっつけで臨んだNHKマイルカップは13着、ダービー15着。

巻き返しを狙う秋は、スワンS8着。

忘れられた3歳チャンプ。『復活』・・・・・・あるのは、その2文字。




あくなき挑戦を続ける古馬たちにも、『復活』の2文字は重い。

4歳でスプリンターズSを制したヒシアケボノ。

NHKマイルカップを勝ったタイキフォーチュン。

朝日杯3歳Sをバブルガムフェローの2着したエイシンガイモン。




G1・11戦目。皐月賞、マイルチャンピオンシップを制しているジェニュイン。

サンデーサイレンス初年度産駒として、初のクラシック制覇馬。その誇りがある。

満足できないダービー2着、天皇賞秋2着、3着、安田記念2着。


つねに球節の痛みに耐えて走ってきた。

だが、そんな弱みは吐かない、吐けない。


競走馬は、走る限り着順がすべて。





11月16日、マイルチャンピオンシップ。

1.プレストシンボリ
2.ブレーブテンダー
3.エイシンガイモン
4.マイネルマックス
5.タイキシャトル
6.バトルライン
7.シンコウキング
8.ヒシアケボノ
9.タイキフォーチュン
10.サイレンススズカ
11.キョウエイマーチ
12.ジェニュイン
13.オースミタイクーン
14.スギノハヤカゼ
15.スピードワールド
16.カネツクロス
17.ロイヤルスズカ
18.トーヨーレインボー


1番人気スピードワールド、2番人気タイキシャトル、3番人気トーヨーレインボー。

4番人気ジェニュイン、5番人気キョウエイマーチ。



ゲートが開くと同時にタイキフォーチュンが煽り、柴田善臣が振り落された。

落馬のアクシデント。


飛び出した馬たちには意識の他だった。前しか見えない真剣勝負。

スタートの速さはキョウエイマーチだった。スタートダッシュで2馬身抜け出した。

ヒシアケボノ、サイレンススズカが追いかけた。

負けてはならじ。サイレンススズカがスピードアップ、キョウエイマーチの外に並びかけようとした。

速い、速い、3ハロン33秒2、ハイペース。



短距離のスピード争いではキョウエイマーチが上回った。

サイレンススズカを3馬身後方に引き離し、再び単独先頭。


3番手ヒシアケボノ。4番手につけたのがタイキシャトルだ。

ブレーブテンダーが内から行き、外からトーヨーレインボー、ロイヤルスズカが上がって行った。


ジェニュイン、スギノハヤカゼ、エイシンガイモン・・・・・・中団がひしめく後ろ、スピードワールドの白い馬体が目立つ。

後方待機。直線、どこまで伸びてくるか!



ハイスピードで飛ばすキョウエイマーチ。

直線に入った。


脚色に衰えはない。


ズルズルとずり下がるサイレンススズカ、ヒシアケボノ。


男馬を後ろに引き離し、ゴールへ向かったキョウエイマーチ。



ただ、1頭、


迫った。



タイキシャトルだッ!



スピードが違った。


キョウエイマーチに迫るや、交わし去り、


突き放した。


これが、父デヴィルズバッグから得た血の強さか!


一気に2馬身半、リードを保ってタイキシャトルはゴールした。



女の意地で粘り切ったキョウエイマーチが2着。

3着にもトーヨーレインボーが入り、4歳若駒が古馬を凌いでワンツースリーを決めた。

歴史的一戦となった。


1着タイキシャトル

2着キョウエイマーチ

3着トーヨーレインボー

4着ロイヤルスズカ

5着プレストシンボリ


(つづく)